整骨院の確定申告|おさえておくべき税金のルールを徹底解説!

2023-12-13

整骨院を開業すると、1年に1回決められた期日までに確定申告が必要になります。確定申告の無申告はペナルティの対象となるため、適切なタイミングで正しく手続きすることが大切です。

整骨院の経営を考えている方や開業して間もない方は、確定申告に向けて知識を深めておきましょう。1人で確定申告をするのが不安な場合は、知識のある専門家に相談するのがおすすめです。

今回は、整骨院経営者に必要となる確定申告の基礎知識と税金のルールを解説します。

整骨院経営者に必要な「確定申告」とは?

そもそも確定申告とは、1年間の所得額を税務署に報告する手続きです。

整骨院経営者に限らず事業所得を得ている事業者は、基本的に毎年2月中旬から3月中旬までの期間に確定申告する必要があります。申告の内容は、1月1日~12月31日までの売上から経費を差し引いた所得額です。

「整骨院を開業した人=個人事業主」となり、確定申告の義務が発生します。店舗の有無を問わず、副業であっても営利活動をする以上個人事業主とみなされます。

申告の義務があるにもかかわらずうっかり確定申告を忘れてしまった場合は、無申告加算税や延滞税が課せられるため注意しましょう。意図的に確定申告をしなかった場合は、重加算税も課せられます。

整骨院経営者の確定申告の種類は、青色申告と白色申告の2つです。ここからは、それぞれの申告方法の概要と違いを解説します。

青色申告と白色申告の違い

青色申告とは、複式簿記による帳簿作成と貸借対照表・損益計算書の作成をした上で申告する方法です。青色申告には特典があり、10万~65万円の所得控除を受けられます。また、3年間の赤字繰り越しができます。ただし、青色申告を選択するには、青色申告承認申請の提出が必須です。
(出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」)

白色申告は、単式簿記による帳簿作成で申告できる方法です。白色申告は青色申告とは異なり、所得控除の特典がなく赤字繰り越しもできません。
(出典:国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」)

売上が少なければ白色申告でも問題ないものの、ある程度の売上がある場合は所得控除を受けられる青色申告のほうがメリットは大きくなります。

整骨院経営における税金のルール

確定申告を正しく行うには、税金のルールを知っておく必要があります。

整骨院経営者が納める主な税金は、下記の4つです。

所得税
住民税
個人事業税
消費税

所得税と消費税は国税、住民税と個人事業税は各市町村に納める地方税です。ただし、消費税の納付は課税事業者が対象となります。

所得税・住民税・個人事業税は所得額をベースに税額が決まるため、課税額を抑えるには適切な経費計上と減価償却が必要です。

ここからは、整骨院の確定申告で知っておきたい知識について詳しく解説します。

「課税事業者」について

課税事業者に該当する個人事業主は、1月1日〜12月31日までの1年間で消費税を計算して期日までに納付が必要です。

年間の課税対象の売上高が1,000万円を超えた場合は、課税事業者とみなされます。納税義務が発生するのは、課税対象の売上高が1,000万円を超えた翌々年からです。

年間の課税対象の売上高が1,000万円を超えない場合でも、翌年の1月1日~6月30日までの課税対象の売上高が1,000万円を超えれば課税事業者に該当します。

基準を満たさない免税事業者には、消費税の納税義務はありません。しかし、2023年10月1日にスタートしたインボイス制度に登録した場合、課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者となります。
(出典:国税庁「消費税のしくみ」)

「消費税の課税対象の売上」について

整骨院の売上は、課税対象の売上と非課税対象の売上に分類されます。

課税対象の売上と非課税対象の売上の具体例は、下記の通りです。

課税対象の売上
  • 自由診療の施術収入
  • 物販販売の収入
非課税対象の売上
  • 保険診療の施術収入
  • 自賠責診療の施術収入
  • 損害賠償としてのキャンセル料

整骨院に限らず、すべての医療機関が提供する社会保険診療・自賠責診療は消費税の対象外です。ただし、診断書や明細書の発行は課税扱いとなるため注意しましょう。

筋肉疲労や肩こりなど自由診療の施術、ホームケア用品などの販売収入は消費税の課税対象です。

キャンセル料には、課税対象になるものと非課税対象になるものがあります。損害補償としてのキャンセル料は非課税対象、事務作業の代金と認められるものは課税対象です。

なお、患者さんからインボイス対応について問い合わせを受けた場合の対応は、下記のリンク記事で詳しく解説しているため、ぜひ併せてご覧ください。
【整骨院の税金と領収書】患者さんからインボイス対応しているか問い合わせがあった場合について解説

「経費項目」について

経費とは、事業のために使用した費用です。

個人事業主の所得税は、累進課税制度により所得額が多いほど高くなります。所得税を低くするには、売上から差し引ける必要経費を適切に計上することが大切です。

整骨院経営者が経費計上できる主な項目は、下記の通りです。

地代家賃
水道光熱費
通信費
施術に使用する消耗品費
施術に必要な備品費
施術料の決済手数料
福利厚生費
広告宣伝費 etc.

自宅兼店舗で経営する場合は、地代家賃や水道光熱費などを按分して経費計上できます。法人と個人事業主を比較すると、法人のほうが経費計上できる範囲は広くなることが特徴です。

「減価償却」について

内装工事費用や高額な設備購入費用は、長期間使用できる固定資産とみなされます。取得価格が10万円以上の場合は、一括で費用計上するのではなく減価償却が必要です。

青色申告を選択している場合は、30万円未満の資産を少額減価償却資産とみなして一括で経費計上できます。
(出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」)

減価償却費の算出方法は、下記の通りです。

定額法 減価償却費=取得価額×定額法の償却率
定率法 減価償却費=未償却残高×定率法の償却率

(出典:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」)

個人事業主は定額法、法人は定率法が原則ではあるものの、事前に税務署へ届け出をすることで償却方法を変更できます。

減価償却費の算出事例は、下記の通りです。

<耐用年数8年の備品を80万円で購入した場合>

定額法 定率法
1年目 80万円×0.125=10万円 80万円×0.250=20万円
2年目 80万円×0.125=10万円 60万円×0.250=15万円
3年目 80万円×0.125=10万円 45万円×0.250=11万2,500円

(出典:国税庁「減価償却資産の償却率等表」)

定額法は、耐用年数に応じて均等に減価償却費を計上できます。定率法は、未償却残高に一定の割合をかけて減価償却費を計上します。購入した年の経費計上が多くなり、減価償却費は徐々に少なくなることが特徴です。

「納税額の計算方法」について

所得税の納税額は、所得額に所定の税率をかけた金額からさまざまな控除を差し引いて求めます。

消費税の場合は、「売上にかかる消費税-仕入れにかかる消費税」で納税額を計算します。原則課税と呼ばれる差額を納税するシンプルな方法です。

課税対象の売上高が5,000万円以下であれば、事前に届け出をすることで簡易課税による納税も可能です。簡易課税では、「売上にかかる消費税-(売上にかかる消費税×みなし仕入れ率)」で納税額を計算します。

整骨院経営に適用されるみなし仕入れ率は、下記の通りです。

自由診療の施術収入 50%
物販販売の収入 80%

(出典:国税庁「No.6505 簡易課税制度」)

売上にかかる消費税が分かれば簡単に納税額を計算できるため、手間を省きたい方には簡易課税が適しています。

「法人と個人事業主の違い」について

法人と個人事業主の主な違いは、下記の通りです。

法人 個人事業主
所得に課税される税目 法人税 所得税
社会保険の加入義務 加入必須 従業員5人未満は加入不要
決算月の設定 任意 12月末
赤字繰り越し 10年 3年

法人化すると、所得税ではなく法人税がかかります。法人税は所得税と違ってほぼ低率で税金が確定するため、節税につながることがメリットです。一方で、社会保険の加入が必要となり人件費がかさむなどのデメリットもあります。

法人化を検討する場合は、特徴やメリット・デメリットをしっかり比較しましょう。

個人事業と法人開業の違いについては、下記のリンク記事で詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。
【接骨院の開業】個人開業と法人開業の違いとは?費用の違いや設立の目安、メリットとデメリットについても解説

まとめ

整骨院経営者は、青色申告または白色申告のどちらかで所得額を報告しなければなりません。確定申告をしないとペナルティの対象となるため注意が必要です。

また、年間の課税対象の売上高が1,000万円を超えた場合やインボイス制度に登録している場合は、課税事業者として消費税の納税義務があります。消費税の納税額は、原則課税または簡易課税で計算します。

確定申告の難易度が高いと感じている方は、専門家による開業支援を利用してみましょう。整骨院経営を考えている方や開業して間もない方は、整骨院の開業支援に特化した全国統合医療協会までお気軽にご相談ください。