整骨院の経営は厳しい?主な経営指標・安定経営のポイントも

2024-01-30

整骨院の開業・経営を考えている方の中には「整骨院の経営は思うよりも厳しく、簡単ではない」という声を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。整骨院を安定して経営することは確かに容易ではありませんが、正しい知識を身につけた上でポイントを押さえた経営をすることで失敗のリスクを低減できます。

この記事では、「整骨院の経営は厳しい」と言われる理由をふまえた上で、安定的な経営を行うための主な経営指標について解説します。整骨院の安定経営を目指すためのポイントも併せて確認し、適切なサポートを活用しながら整骨院の経営成功を目指しましょう。

「整骨院の経営は厳しい」と言われる理由

「柔道整復師は独立開業のしやすい国家資格」というイメージを抱いている方も多いでしょう。柔道整復師は整骨院や病院、介護施設など幅広い分野で活躍できる職業ですが、経験を積んで自身の整骨院の開業・経営を目指す柔道整復師も多数います。

しかし、整骨院の経営を軌道に乗せることは簡単なことではありません。実際に「整骨院の経営は難しい」「倒産した整骨院も少なくない」などの話を聞いて不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

ここでは、整骨院の経営が厳しいと言われる理由について解説します。整骨院や柔道整復師を取り巻く現状をふまえた上で、整骨院の経営に関する正しい知識を身につけましょう。

競合の増加

整骨院の経営が難しいと言われる理由の1つとして、1998年の規制緩和を機に柔道整復師や整骨院の数が増加して競合が増えたことが挙げられます。

2020年度に発表された厚生労働省の調査によると、2010年の柔道整復師数は50,428人であったのに対し、2020年には75,786人と10年間で約1.5倍に増加しています。また、柔道整復の施術所数は2010年には37,997か所であったのに対し、2020年には50,364か所と約1.3倍に増えていることが分かります。
◆柔道整復師数・施術所数の年次推移(2010年~2020年)

2010年 2012年 2014年 2016年 2018年 2020年
柔道整復師数 50,428人 58,373人 63,873人 68,120人 73,017人 75,786人
施術所数 37,997か所 42,431か所 45,572か所 48,024か所 50,077か所 50,364か所

(出典:厚生労働省「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/20/dl/kekka3.pdf

新規開業する整骨院が増える一方で、競合との差別化ができず倒産する整骨院も少なくありません。帝国データバンクの調査によると、整骨院の倒産件数は近年増加傾向にあり、2018年の1年間には85件もの整骨院が倒産しています。特に保険診療を中心に行う個人経営の整骨院の状況は、年々厳しくなっていると言えるでしょう。

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保険請求の厳格化

整骨院の診療体系には、健康保険が適用される保険診療と、健康保険が適用されない自費診療の2種類があります。多くの整骨院は保険請求を適切に行っているものの、架空請求や水増し請求などの不正を働く整骨院もゼロではありません。このような不正を防ぐため、国は保険請求審査の厳格化を進めています。

保険請求審査の厳格化が進んだことで、保険診療内の施術で他院との差別化を図る事が難しくなりました。その結果、自費診療の施術に魅力的なメニューがない整骨院では顧客離れが徐々に進んでいます。今後の整骨院経営では、自院のコンセプトに沿った魅力的な自費診療メニューを開発することが重要になるでしょう。

整骨院における主な経営指標4つ


競合の増加や保険請求の厳格化など、整骨院を取り巻く現状は決して明るいものとは言い切れません。しかし、このような状況の中でも経営指標をしっかりと理解した上で、安定経営を実現している整骨院は少なくありません。ここでは、整骨院経営にあたって押さえておきたい4つの経営指標について解説します。

利益率

利益率(営業利益率)とは、売上に対して利益(売上から経費を引いたもの)が占める割合のことであり、以下のような式で算出できます。

◆利益率を求める式

利益率(%)=利益(円)÷売上(円)×100

黒字経営となっている整骨院では、4~5%ほどの利益率を維持しているケースが多いと言われています。まずは利益率4~5%という数値を目標にして、将来的には利益率10~15%を目指せるような経営を考えましょう。

人件費

人件費が適正な状態であるかどうかは、「労働分配率」という指標で考えることができます。労働分配率は売上総利益に占める人件費の割合のことですが、整骨院の場合は仕入れなどの経費が少ない場合が多いため、売上に占める人件費の割合と考えて差し支えありません。

◆労働分配率を求める式

労働分配率(%)=人件費(円)÷売上(円)×100

人件費には給与だけでなく、社会保険料や教育費用、福利厚生費用なども含まれており、整骨院業界では40%前後であることが多いと言われています。給与や待遇はなるべく維持しつつ、労働分配率を30~35%ほどに抑えられるよう売上を伸ばしましょう。

地代家賃率

地代家賃率とは、売上に占める地代や家賃の割合のことです。整骨院を運営する上で必ずかかる固定費であるため、土地や物件の契約前に綿密なシミュレーションをしておきましょう。

◆地代家賃率を求める式

地代家賃率(%)=地代・家賃(円)÷売上(円)×100

地代家賃率は業界を問わず10%前後が目安と言われています。整骨院は「立地」が重要な差別化要素の1つであるため、地代家賃率を下げる目的で土地や物件を妥協しすぎないようにしましょう。

広告費率

広告費率とは、売上に占める広告宣伝費の割合を指します。

◆広告費率を求める式

広告費率(%)=広告宣伝費(円)÷売上(円)×100

整骨院業界は、他の業界と比べて広告にかける費用が少ない傾向があります。しかし、他院との競合が激しさを増している中で、地域の方々に自院を認知してもらうことは整骨院の安定経営のためにも非常に重要です。広告費率3~5%を目安に、自院のホームページやSNS発信、チラシ、DMなどの広告宣伝に投資しましょう。

整骨院の安定経営を目指すためのポイント3つ


整骨院の経営を安定させるためには、整骨院を取り巻く現状を理解した上で、適正な経営指標を意識することが大切です。健全で安定した経営につなげるためにも、ポイントを押さえた整骨院経営を行いましょう。

ここでは、整骨院の安定経営を目指すためのポイントを3つ紹介します。

自費診療のコンセプトを打ち出す

従来は「保険診療で痛みが和らぐ施術」が無難でしたが、競合が増え、保険請求審査が厳しくなった現在では、保険診療のみで整骨院経営を支えることが難しくなってきました。他院との競争の中で生き残り、整骨院経営を安定化させるためには、自院のコンセプトを明確にし、独自の魅力的な自費診療メニューを開発しましょう。

自院のコンセプトを考える際には、自身が整骨院で行いたい施術や得意な施術を考慮しながら、ターゲット層を明確にすることが大切です。ターゲット層に響く自費診療メニューを打ち出し、他院との差別化を図りましょう。外装や内装、院内掲示物などの方向性をコンセプトと揃えることもポイントです。

適切な単価を設定する

自費診療メニューの施術料金は整骨院側が自由に設定することができますが、施術料金を高くしすぎると患者さんの来院ハードルが上がってしまいます。一方で、施術料金を低くしすぎても利益が出ません。

自費診療メニューの単価を設定する際には、現実的な売上目標を決めた上で、その金額から逆算して設定すべき客単価を求めます。たとえば、月間の売上目標を120万円として月に20日稼働する場合、1日当たり6万円を売り上げなければなりません。1日に12人の患者への施術が見込めるのであれば、客単価は5,000円となります。

このようにして算出した客単価をもとに、自費診療メニューの単価を決定します。診療内容や施術時間、売上への貢献度などを考慮した上で、料金を調整しましょう。

ターゲットに適した集客を行う

自院のコンセプト設計やターゲットの明確化を行い、独自の自費診療メニューを提供できる準備が整ったら、ターゲットに適した集客活動を行って患者さんを確保しましょう。ターゲット層の悩みや不安を解決できるようなキャッチフレーズや、「腰痛専門整骨院」など専門性をアピールする言葉を使うと効果的です。

また、ターゲットや目的に合った広告媒体で集客活動を行うことも大切です。チラシやDMなどの紙媒体で地域の方に広く認知してもらいつつ、SNSやホームページを活用してターゲットとなる患者さんを呼び込みましょう。

まとめ

競合の増加や保険請求の厳格化に伴い、整骨院の安定経営を維持することは年々難しくなっています。しかし、整骨院に関する正しい経営指標を理解した上で開業すれば、倒産や失敗のリスクは十分に回避可能です。コンセプト設計やターゲット選定、単価設定を適切に行って他院との差別化を図り、競合他院との競争を生き残りましょう。

整骨院を経営する上で自身の知識やスキルが足りないと考えている方は、ぜひ全国統合医療協会にご相談ください。全国統合医療協会の開業・運営支援を活用し、自院の経営を軌道に乗せましょう。