整骨院の「構造設備基準」とは?2つの基準・注意点・内装のポイント

2023-12-13

整骨院の開設にあたって重要なのが「構造設備基準」です。法令に基づいた基準や保健所の指導事項、そして内装の選び方まで、整骨院の開業スケジュールがスムーズにいくかどうかはこれらの要素に大きく左右されます。しかし、これらの基準やポイントを正確に把握するのは案外難しいものです。

当記事では、整骨院の構造設備基準の概要と具体的な基準、および開設に向けて重要なポイントを解説します。これから整骨院を開設しようと考えている方はもちろん、現在経営している方にも役立つ情報が満載です。ぜひ最後までお読みください。

整骨院の「構造設備基準」とは

整骨院の「構造設備基準」とは、施術所を運営する上で遵守しなければならないと法律で定められている一連の要件です。

この法律で定められているのは、施術空間の広さ・清潔さ・プライバシー保護・安全性など、患者の利便性と安心を確保するための基準です。

整骨院の開設には、これらの基準を完全に満たすことが絶対条件となります。そのため、内装工事に着工する前・内装を決める際には、この構造設備基準を十分に理解し、適切に反映させなければなりません。

万が一基準を満たさない状態で開設届を出した場合、保健所の職員による現地確認で改善指導を受けることになります。

改善指導を受けると、既に行った内装工事の見直しや追加工事が必要となり、経済的な負担の増加は必須です。さらに、整骨院の開設が遅れるなどのデメリットも生じるため、初めから構造設備基準を満たせるように動く必要があります。

整骨院の構造設備基準における2つの基準

整骨院の構造設備基準には2つの主要な基準が存在します。整骨院運営の根幹を成す重要な要素であり、「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(通称:あはき法)」と「柔道整復師法」で定められた基準です。

1つ目の基準は国の法令に基づく「省令」で、施術所の構造や設備に関する基準が定められています。2つ目の基準は、各保健所が都道府県の健康福祉部門や厚生労働省へ疑問点を問い合わせ、得た解釈を基に設けられた「指導事項(基準)」です。

ここでは、整骨院の構造設備基準2つを、それぞれ解説します。

法令に基づいた「省令」

法令に基づく「省令」では、施術室・待合室・衛生面の3つの主要な基準が設けられています。基準を定めている条項と、既定の内容は以下の通りです。

柔道整復師法
  • 第十八条 法第二十条第一項
  • 第十九条 法第二十条第二項
あはき法
  • 第二十五条 法第九条の五第一項
  • 第二十六条 法第九条の五第二項
施術室の基準
  • 最低面積:6.6平方メートル以上
  • 換気:室面積の7分の1以上を外気に開放できること、または適切な換気装置を設置
待合室の基準
  • 最低面積:3.3平方メートル以上
衛生面の基準
  • 常に清潔に保つ
  • 採光、照明、換気を十分にする
  • 施術に使用する器具や手指の消毒設備を備える

(出典:e-Gov 法令検索「平成二年厚生省令第二十号 柔道整復師法施行規則」)
(出典:e-Gov 法令検索「平成二年厚生省令第十九号 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律施行規則」)

これらの基準は、患者の快適性と安全を保障するために設けられており、法令に則った適切な施設設計が求められます。すべての基準を満たすまでは整骨院を開設できないため、細部にわたる注意が必要です。

保健所で定められた「指導事項(基準)」

保健所で定められた「指導事項(基準)」は、法令に基づく省令とは別に、各地域の特性や実情を反映した具体的な運用基準です。これらは自治体ごとに異なり、保健所の担当者による裁量も大きく影響します。

例として、京都府で定められている指導基準を紹介します。

施設の独立性
  • 施術所は住居や店舗と構造上独立し、出入り口を含めて明確に区分する
施術室について
  • 施術室と待合室は明確に区別し、固定壁で完全に仕切る
  • あはきと柔整の両方を行う場合、専用の施術室を設ける
  • 1人の施術者があはきと柔整の免許を有する場合、施術室を兼用してもよい
  • 患者のプライバシー保護のため、ベッドが2台以上ある場合はカーテンなどで仕切る
待合室について
  • あはきと柔整を行う施設では、待合室を兼用してもよい
消毒設備について
  • 消毒設備には器具の滅菌機器や手洗い場、手指消毒薬などが含まれる
  • 侵襲を伴う治療器具の使用時は、適切な滅菌器具の設置が必要となる
  • 手指消毒液を設置し、清潔保持や物品管理に配慮する
その他
  • 施術記録や個人情報を適切に管理できる備品を備える

(出典:京都府健康福祉部医療課「施術所開設の手引き」)

「指導事項(基準)」は地域によって異なるため、開設予定地の保健所に事前に相談し、図面などを用いて具体的な指導を受けましょう。

構造設備基準における3つの注意点

整骨院の構造設備基準には、特に注意すべきポイントがあります。柔整と鍼灸・マッサージ等で兼業する場合や経営計画を立てる際、開設届の手続きなど、これらの注意点を把握し適切に対応すれば、スムーズな開設と運営が可能です。

ここでは、3つの注意点について解説します。

柔整と鍼灸・マッサージ等の兼業に関する注意点

施術者が2人以上で柔整と鍼灸・マッサージ等の兼業をする場合、次のような注意点があります。

施術室の基準
  • 構造設備基準を満たした施術室が2室必要となる
施術室の区分
  • 柔整室と鍼灸室の区分にカーテンやパーテーションを認めない保健所が多い
施術室への入り口
  • 各施術室への入り口は別々に設ける
  • 待合室の面積に関する解釈は保健所によって異なる
兼業の場合の施術室
  • 柔整師とマッサージ師の兼業は、柔道整復師法とあはき法に基づいた別室対応が必要となる

なお、1人の施術者があはきと柔整の両方の免許を持ち兼業する場合は、施術室の兼用が可能です。以上の点を理解し適切に対応することで、兼業による整骨院開設がスムーズに進みます。

経営計画に関する注意点

施設を設計する際には、将来の人員拡大に備えた施設設計が重要です。1人で柔道整復師と鍼灸師の施術を行う場合、1室での兼務が認められています。

しかし、施術者が2名以上になると、柔整室と鍼灸室を完全に区分しなければなりません。これは保健所での変更手続きの際に指摘されるケースが多い問題です。

いずれ事業を拡大するつもりがあるなら、初めから柔整室と鍼灸室を別々に設計しておきましょう。対応を怠ると後から改装工事や転居が必要になり、余分な費用がかかります。効率的かつ経済的な運営のためにも、将来を見越した経営計画は非常に重要です。

開設届の提出に関する注意点

整骨院の開設届は、開設後10日以内に保健所に提出する必要があります。開設届の提出後には、保健所による実地検査が行われることが一般的です。検査の結果、施設のレイアウト変更などの改善指導を受ける可能性もあります。

そのため、施設のレイアウトが決まった段階で平面図を保健所に持参し、施設の状況や建物の構造上の事情を説明し問題がないか確認しておきましょう。事前に相談しておけば、改善指導のリスクを減らせます。また、建物の構造上の特殊な事情がある場合、保健所が柔軟に対応してくれるケースも少なくありません。

整骨院の内装を決める際のポイント

整骨院の内装を決める際には、法令に基づく「構造設備基準」を満たすことはもちろん、患者さんにとって心地よい空間であるかどうかも大切です。

内装計画を進めるときは、下記に示すポイントを考慮しておきましょう。

●清潔感
痛みを取り除きたい患者さんが来院するため、病院のように清潔感あふれる、癒しのあるインテリアが求められます。

●設備
エアコンやお手洗いなど、最低限必要な設備は完備しなければなりません。

●デザイン
壁・床・インテリアのデザインは、地域の雰囲気やターゲットとなる患者層に適したものを選びましょう。

上記のポイントとコストを踏まえつつ、プラスアルファの要素を取り入れると、多くの方に選らばれる施設を作り出せます。患者の快適性を最優先に考えた内装計画を立てることが、整骨院成功への鍵です。

まとめ

整骨院の開設には、構造設備基準の理解と遵守が不可欠です。法令に基づく省令の要件や保健所の指導事項は地域によって異なるため、管轄の保健所との連携が重要です。また、整骨院の内装も構造設備基準に加え、患者にとって心地よい空間であることを心がける必要があります。

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