整骨院は儲かる?二極化が生じる背景・儲かる整骨院を目指す方法も

2025.10.30
整骨院は儲かる?二極化が生じる背景・儲かる整骨院を目指す方法も

近年、整骨院は駅前や住宅地、オフィス街などさまざまな場所で見かけるようになりました。健康志向の高まりや施術の多様化によって、柔道整復・鍼灸・マッサージ市場は競争が激しさを増している状況です。

しかしその一方で、整骨院業界では「儲かる院」と「苦戦する院」が分かれており、従来の経営方法だけでは安定した収益を確保するのが難しくなっています。

そこで今回は、整骨院が本当に儲かるのかという現状から、二極化が生じる背景、そして「儲かる整骨院」を目指すための具体的なポイントまで詳しく解説します。

1. 整骨院は本当に儲かる?

近年は健康志向の高まりや施術の多様化によって整骨院の需要は増加し、街中の至る所で見かけるようになりました。 独立開業した整骨院経営者の平均年収は約400万~800万とされているものの、なかには1,000万円以上を得ている経営者も存在します。

しかし、たとえ需要が増加しているとは言え、整骨院を独立開業すれば誰もが儲かるとは言い切れないのも実情です。

1990年代までは「整骨院を開業すれば儲かる」と言われており、表立って集客・宣伝せずとも1日100人超の顧客が訪れる整骨院も珍しくありませんでした。しかし2000年以降、人口の減少や柔道整復師の急増、そして整骨院の競争激化などさまざまな要因によって経営難に陥る整骨院が徐々に増加しました。

実際に、東京商工リサーチが行った調査では、2025年上半期のマッサージ業倒産件数が過去20年で最多の55件に達し、そのうち「売上不振」が理由で倒産した整骨院は83.6%と大部分を占めていることが分かっています。

出典:東京商工リサーチ「2025年1-6月の「マッサージ業」倒産55件 20年間で最多、熾烈な競争で値上げも限界 | TSRデータインサイト」

このように、 現在の整骨院の独立開業はかつてのように自ずと儲かるものではなく、「成功する(儲かる)院」と「苦戦する(儲からない)院」に二極化しているのが現状 です。

2. 整骨院を取り巻く環境|二極化が生じる背景

前述の通り、近年の整骨院は儲かる院と儲からない院の二極化が進んでいます。

その背景としては、整骨院を取り巻く外部環境の変化、具体的には「競合の増加」「保険制度の厳格化」「融資環境の厳格化」が挙げられます。

ここからは、それぞれの要因について詳しく説明します。

2-1. 競合の増加

近年では柔道整復師と整骨院の数が急増し、地域内の競争が激化しています。

厚生労働省の統計によると、2024年度末の就業柔道整復師数は78,666人で、前回調査(2022年)より1,034人(1.3%)増加しました。一方で、 柔道整復の施術所は50,924か所と、同調査から8か所(0.0%)しか増えておらず横ばいの状態 です。

出典:厚生労働省「3 就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所」

施術所数が横ばいに見えるのは 開業と廃業が拮抗しているためであり、むしろ柔道整復師数だけが増えていることから経営の厳しさがうかがえる でしょう。特に都市部では競争が激化しており、以前のように宣伝しなくても集客できる状況はすでに通用しなくなっています。

2-2. 保険制度の厳格化

儲かる整骨院と儲からない整骨院の二極化が生じているもう1つの大きな要因が、保険制度の厳格化です。

かつて整骨院では、健康保険の適用範囲が広く保険収入が経営の柱となっていました。しかし現在は、不正請求の防止や医療費抑制を目的に健康保険の適用範囲や審査が厳しくなっており、保険収入に頼れず経営基盤が弱体化した整骨院も増加しました。

これにより、近年では多くの整骨院が安定した利益の確保に向けた自費メニューの導入や施術の多様化に取り組んでいるものの、 新規メニューの開発・導入コストやスタッフ教育などの負担が増えることから、かえって経営の難易度を高める一因ともなっています。

2-3. 融資環境の厳格化

整骨院は保険収入に依存しやすく、収益構造が不安定なうえ廃業率が高いため、金融機関から「リスクが高い業種」と見られがちです。結果として、民間金融機関では融資審査が慎重に行われる傾向があります。

ただし、日本政策金融公庫などの公的融資制度では依然としてサポート体制が整っており、緻密かつ現実的な創業計画書や返済計画を提出できれば、必要な資金を調達できる余地は十分にあります。

つまり、 融資環境が厳しくなったとは言え、事前準備を怠らなければ過度に不安視する必要はない でしょう。

3. 「儲かる整骨院」を目指すためには?

整骨院業界は競争が激しく、どのようなサービスを提供するか、どのように顧客との信頼関係を築くかによって、経営の成功・失敗が大きく分かれます。

整骨院の経営で安定した利益を得るためには、単純に顧客数を増やすだけではなく、「競合との差別化」「新規顧客の獲得」「リピート客の定着」という3つの柱をバランスよく実践することが欠かせません。ここからは、それぞれの施策について詳しく紹介します。

3-1. 競合との差別化を図る

整骨院が利益を伸ばすには、まず「他院とどう違うのか」を明確に示す必要があります。

周辺地域に整骨院が複数あり、それぞれ施術内容や価格が似通っている場合、顧客は「できるだけ安いところ」を選ぶ傾向にあります。つまり、価格競争に陥りやすくなり、競合よりも料金がやや高いだけで選ばれなくなる可能性もあります。だからこそ、自院ならではの強みや独自性を打ち出して競合との差別化を戦略的に行うことが重要です。

競合との差別化を図る方法として最も有効なのが、 自費メニューの導入 です。健康保険を使った施術だけでは単価が限られますが、自費施術メニューを追加することで利益率を高められます。

また、 ターゲットを明確にし、その層に合わせた施術やサービスを提供することも差別化につながります。 例えば「スポーツ障害に特化したプログラム」や「産後ケアに強い施術メニュー」など、施術の専門性を打ち出すことで、顧客に選ばれる理由をつくることが可能です。

3-2. 新規顧客を増やす

「儲かる整骨院」の第一歩は、新規顧客を増やすことです。どれほど良いサービスを提供していても、まずは多くの人に存在を知ってもらわなければなりません。

新規顧客を獲得するためには、 ターゲット層に合った集客方法を選ぶことが大切 です。SNSやGoogleマップ、LINE公式アカウントなど、オンラインのツールを活用することで、効率良く情報発信ができます。そのほか、地域のイベントや健康セミナーに参加するのも、顔を覚えてもらうきっかけとなるでしょう。

また、 来院前から信頼を得る工夫も重要 です。ホームページで施術者の実績や資格を分かりやすく紹介したり、口コミを積極的に集めたりすることで、ユーザーから「ここなら安心」と感じてもらいやすくなります。

3-3. リピート客を増やす

整骨院で安定した利益を得るためには、一度来院したお客さんをリピーターへと育て、継続して通ってもらうことが欠かせません。なぜなら、リピート客が増えるほど毎月の売上が安定し広告費や集客コストも抑えられるなど、経営基盤が強固になるためです。

リピート客を増やすためには、 院内環境やサービスの質を常に高めることが不可欠 です。院内を清潔に保ち、居心地のよい空間をつくることで「また来たい」という気持ちを引き出せます。

また、来院ペースに応じた予約管理やフォローアップを行い、必要なタイミングで適切に案内することも効果的です。施術後の経過を確認する連絡や、定期的な来院を促す案内を行うことで「気にかけてもらえている」という安心感を与えられるでしょう。

加えて、会員制度や特典を導入するのも有効です。例えば回数券や紹介特典を用意することで、顧客が継続的に通う動機を高められます。 こうした細やかな工夫を積み重ねることで、長期的に信頼される整骨院としての地位を確立できる でしょう。

まとめ

整骨院業界では、競合の増加や保険制度の厳格化、融資環境の変化などを背景に、儲かる院と苦戦する院の二極化が進んでいます。成功の鍵は、競合との差別化を図りつつ、新規顧客を着実に獲得し、さらにリピート客を増やして安定した収益基盤をつくることです。

全国統合医療協会では、整骨院の開業・運営支援のほか、療養費請求代行サービスやレセコン導入支援、医療機器紹介など、整骨院経営における多角的なサポートを提供しています。自院を「儲かる整骨院」に成長させたい経営者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

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中村 崇男

昭和44年東京生まれ。昭和63年都内整骨院を勤務し、東京柔道整復専門学校を卒業後、平成23年一般社団法人全国統合医療協会を設立。鍼灸師・柔道整復師の社会的地位と健康医療福祉の更なる向上を目標に幅広い分野で活動中。
一般社団法人全国統合医療協会理事長
公益財団法人明徳会清水ヶ丘病院理事長