【整骨院】時間外加算・深夜加算・休日加算の算定要件

整骨院では、健康保険が適用される保険施術を行った場合にのみ、施術内容に応じた「柔道整復療養費」を請求できます。柔道整復療養費の請求においては、「時間外加算」「深夜加算」「休日加算」など、特定の条件下による加算が認められています。
ただし、これらの加算分を柔道整復療養費に上乗せするためには、所定の要件を満たす必要があります。保険請求にかかわるトラブルを防ぎ適正な報酬を得るためには、各加算の算定要件を把握し、適切なタイミングで正しく算定を行うことが重要です。
そこで今回は、整骨院における時間外加算・深夜加算・休日加算の算定要件や注意点について詳しく解説します。
目次
1. そもそも時間外加算や深夜加算などの「~加算」とは?

整骨院で算定できる「時間外加算」「深夜加算」「休日加算」とは、通常の施術時間外や深夜、休日などに保険施術を行った際、通常の柔道整復療養費に上乗せして請求できる追加料金を指します。
これらは健康保険の療養費算定基準で認められている加算項目であり、施術者が営業時間外に保険施術を行った場合は、通常の料金に加えて加算分を請求することが可能です。
柔道整復療養費とあわせて請求できるため、適切に活用すれば整骨院経営にとっても重要な収益となります。ただし、算定には明確な条件があるため、正しい理解が必要です。
2. 【整骨院】時間外加算・深夜加算・休日加算の算定要件

整骨院で時間外加算・深夜加算・休日加算を算定するためには、加算の種類にかかわらず共通する基本的な算定要件があります。下記を満たしていない場合、時間外・深夜・休日におけるすべての加算は認められません。
共通要件(1)初検患者である
原則として、これらの加算は初検時のみ算定可能です。ただし、すでに通院している患者であっても、これまで施術していた部位とは異なる新たな負傷で緊急性が認められる場合は算定可能です。
共通要件(2)健康保険が適用される施術である
加算はあくまで療養費の支給対象となる保険施術でのみ認められます。自由診療で行った施術には算定できません。
共通要件(3)やむを得ない事情があり、緊急で施術が必要と判断できる
「仕事終わりしか空いていない」「平日の日中は忙しくて施術時間を取れない」といった、患者さん側や施術者側の都合では加算できません。加算できる例としては、「夜間に階段から落ちて足を捻挫し歩けなくなったが、近隣の病院が閉まっていたため整骨院に来院した」というケースで、かつ急性外傷による緊急施術が必要と判断された場合などが挙げられます。
なお、時間外・深夜・休日それぞれの加算には、共通要件に加えて「時間に関する個別の基準」も設けられています。ここからは、各加算における個別の算定要件について紹介します。
2-1. 時間外加算の算定要件
時間外加算は、 「休日(日・祝)を除く通常の営業時間外」に来院した、「緊急性が認められる初検患者さん」 に対して算定できる加算です。
時間外加算の算定が認められる具体的な時間は、各整骨院の通常の営業時間によっても異なります。しかし一般的には、平日・土曜日それぞれで下記の時間帯が目安とされています。
平日 | 8:00~18:00以外 |
---|---|
土曜日 | 8:00~12:00以外 |
上記はあくまで標準的な目安であり、実際には各整骨院が定めた営業時間が基準となることを覚えておきましょう。
2-2. 深夜加算の算定要件
深夜加算は、 「深夜時間帯」に来院した、「緊急性が認められる初検患者さん」 に対して算定できる加算です。
深夜時間帯は一般的に22:00~翌6:00とされていますが、通常営業が22時以降までに及んでいる整骨院の場合は、たとえその時間帯に施術を行っても深夜加算はできません。
あくまでも、この深夜時間帯が通常の営業時間と重ならないことが条件となっている点を覚えておきましょう。
2-3. 休日加算の算定要件
休日加算は、 「整骨院の通常休診日」に来院した、「緊急性が認められる初検患者さん」 に対して算定できる加算です。
「休日/通常休診日」とは、多くの整骨院が毎週決まって休業日としている日曜日や祝日を指すケースがほとんどです。しかし、例えば日曜日や祝日だけでなく木曜日も通常休診日とする場合は、木曜日も休日加算の対象となります。また、年末年始やお盆休みといった長期休暇も対象です。
一方で、「臨時休業日」など施術者都合による休診日に行った施術については、休日加算を算定できません。あくまでも、通常の休業日であることが必要条件となる点をおさえておきましょう。
3. 整骨院で時間外加算・休日加算・深夜加算を算定するときの注意点

時間外加算・休日加算・深夜加算を整骨院で算定する際には、いくつか注意しておくべきポイントがあります。これらの加算は、通常の施術とは異なり細かなルールが定められており、正しく理解していなければ誤って算定してしまうリスクもあるため注意が必要です。
算定要件を満たしていないにもかかわらず加算してしまった場合、後から療養費の返戻や減額につながる可能性もあります。トラブルを未然に防ぐためにも、ここから紹介する算定時のポイントをおさえておきましょう。
3-1. 各加算を重複して算定できない
時間外加算・深夜加算・休日加算は、それぞれ重複して算定することは認められていません。
仮に「時間外かつ深夜時間帯に施術を行った場合」でも、時間外加算と深夜加算の両方を併せて請求することはできず、いずれか金額が高い方のみを算定する形となります。
また、これらの加算は、あくまでも通常営業時間外や休業日など、緊急かつ例外的な事情によって施術を行った際に認められるものであるため、算定時には十分な注意が必要です。
3-2. 営業時間外でも加算が認められないケースがある
営業時間外に施術したからと言って、必ずしも加算できるとは限りません。
例えば、閉店時間から10分程度しか経っておらず、施術者が通常通り院内に在籍している・受付体制が整っていた場合、実態として「通常時間内と変わりない」とみなされ、時間外としての加算が認められない可能性があります。
「緊急の対応だったか」「営業時間外としてやむを得ない施術だったか」という点が重視されるため、加算を行う場合はその判断基準を正しく理解しておきましょう。
3-3. レセプトに算定根拠を明記しておく
時間外・深夜・休日による施術は、通常営業時間内の施術と比べて件数が圧倒的に少ないことから、保険者によって厳しく確認される傾向があります。
加算が認められなければ療養費も支給されないため、レセプト(療養費支給申請書)の摘要欄には、加算の根拠となる具体的な状況を明記しておきましょう。
【算定根拠の記載例】
「閉院から1時間を経過した22時30分に来院。近隣病院休診中に捻挫負傷。疼痛が強く歩行困難なため応急施術を実施した。」
上記のように、 患者さんの来院状況や時間帯を具体的に記載しておくことで、保険者に加算の背景を明確に伝えることができ、トラブル防止につながります。
まとめ
整骨院における時間外加算・深夜加算・休日加算は、いずれも保険制度上で定められた追加算定ですが、算定には厳格な条件が設けられています。
また、各加算は重複できない、レセプトには根拠を明記する必要があるなど、注意すべきポイントも多く存在するため、正しい知識をもって算定することが大切です。
全国統合医療協会では、整骨院経営に関する豊富な実績をもとに、保険請求や加算に関する疑問・不安にも対応しております。柔道整復療養費に関することだけでなく、整骨院経営に関してもお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
