整骨院の開業資金|初期費用・運転資金別に費用項目を詳しく紹介!

2023-03-10

柔道整復師として実務経験を重ねてきた人の中には、「自分の理想とする整骨院を自らの手で運営したい」と考える人も多いでしょう。「開業しただけ」で終わらせず、長く地域の人々に愛される整骨院を運営するためには、事前準備が重要となります。

整骨院の開業に当たってまず考えなければならないのが、開業資金です。当記事では整骨院の開業資金について、初期費用・運転資金別に費用項目ごとに解説します。世間一般の相場額も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

整骨院の開業資金は2種類に分けられる!

整骨院の開業に必要となる資金は、600万~1,700万円程度と言われています。そして整骨院の開業資金を計算する際は、「初期投資」と「運転資金」の2種類に大別して考えなければなりません。

初期投資とは物件の取得・改装費用や施術機器代など、整骨院の開業に必要な場所と環境、道具などを用意するための資金です。対して運転資金は水道光熱費や人件費といった、開業後の事業継続に必須となる資金を指します。

【初期費用編】整骨院の開業資金5つ


整骨院開業の初期費用(初期投資)は、500万円~1,200万円程度を必要とするケースが一般的です。整骨院開業の初期費用は、下記5つの項目に分かれます。

物件取得費用
改装工事費用
施術機器・備品代
広告宣伝費
1~3か月分の運転資金

次に、それぞれの項目でかかる費用の内訳や目安を確認しましょう。

(1)物件取得費用

整骨院開業に当たってまず確保しなければならないのが、店舗となる物件です。一般的な整骨院で必要な広さ15坪~18坪(約50㎡~60㎡)店舗用物件にかかる初期費用は、おおよそ100万~150万円程度となります。

物件取得費用の内訳は、下記の通りです。

【物件取得費用の内訳例】

土地・建物取得費
前家賃
保証金
敷金
礼金
管理費
共益費
仲介手数料
駐車場・駐輪場契約

物件取得費用は、開業するエリアや駐車場の有無によっても大きく左右される項目です。自宅の敷地を利用できれば、費用を抑えられます。

(2)改装工事費用

一般的な整骨院の店舗仕様を整えるために必要となる初期費用は、200万~500万円程度が相場となります。

改装工事費用の内訳は、下記の通りです。

【改装工事費用の内訳例】

設計・デザイン料
電気設備工事
空調設備工事
給排水工事
内装・外壁工事
諸経費

改装工事費用は設計・デザインを依頼する相手や、利用する物件の仕様によっても金額が大きく異なります。居抜き物件を選べば、事務所や自宅を大きく改装する場合よりも比較的費用を抑えやすいでしょう。

(3)施術機器・備品代

施術機器や備品は、初期費用の中でも物件取得費用や改装工事費用と並び大きな金額を占め、100万~300万円程度が相場となります。

施術機器・備品代の内訳は、下記の通りです。

【施術機器・備品代の内訳例】

ベッド
タオル
衛生材料
超音波治療器等各種物療機器

物件の広さや見込み客層のニーズに合わせて、必要なベッド数・物療機器を選びましょう。費用を抑えたい場合は、中古医療機器やレンタル品の活用もおすすめです。

(4)広告宣伝費

居心地のよい院で優れた技術を提供するためには、地域の人に整骨院の存在を知ってもらう必要があります。広告宣伝費は、50万~100万円程度を用意しておきましょう。

広告宣伝費の内訳は、下記の通りです。

【広告宣伝費の内訳例】

看板製作費
ホームページ制作費
チラシ制作・配布費
Web広告出稿費
診察券・回数券製作費
クーポン券配布費用

広告宣伝費は依頼先によって金額が大きく異なります。費用を抑えたいのであれば、複数の業者を比較検討することが大切です。

(5)1~3か月分の運転資金

開業後しばらくの間運転し続けるための資金確保も、忘れてはなりません。開業に当たっては、つい「整骨院を開くまで」に必要な初期投資ばかりに目が行きがちです。

しかし多くの場合、集客が順調に進んでも、開業した整骨院の経営が軌道に乗るまで数か月を要します。売り上げの60~70%を占める療養費(保険)やクレジット決済の入金には、1~4か月程度かかるためです。

その間にも発生する固定費や変動費を準備しておかなければ、院の経営が破綻しかねません。整骨院の運営に必要な資金の相場は、1か月あたり50万円~150万円程度です。最低でも1か月、できれば3か月以上の運転資金を確保しておきましょう。

【運転資金編】整骨院の開業資金6つ


整骨院の運転資金は、1か月あたり50万円~150万円程度を必要とするケースが一般的です。整骨院開業後の運転資金は、下記6つの項目に分かれます。

地代家賃
水道光熱費
人件費
広告宣伝費
仕入れ費用
その他費用

次に、それぞれの項目でかかる費用の内訳や目安を確認しましょう。

(1)地代家賃

毎月の地代家賃は、整骨院の売り上げに関わりなく発生する固定費です。開業するエリアや確保する駐車場・駐輪場によって金額はまちまちですが、一般的な相場は1か月あたり12万~15万円程度となります。月によって金額が大きく変動することは基本的にないため、事前にしっかりと計算しておきましょう。

地代家賃の内訳は、下記の通りです。

【地代家賃の内訳例】

土地・建物・テナントの賃借料
管理費
共益費
駐車場・駐輪場費用

(2)水道光熱費

水道光熱費は、基本料金+使用料金で構成されます。整骨院の広さや集客人数によっても金額の変動が大きな費用となるものの、ほぼ固定費と言ってもよい変動費です。一般的な相場は1か月あたり10万~12万円程度となります。

水道光熱費の内訳は、下記の通りです。

【水道光熱費の内訳例】

水道代
電気代
ガス代

(3)人件費

人件費は、整骨院の運営資金の大部分を占める固定費用です。スタッフの人数や属性、雇い方によって必要な費用が異なるものの、一般的な相場は1か月あたり105万~113万円程度となります。一度雇用した後はこちらの都合や運営状況に合わせた人数調整を簡単にできないため、事前にしっかりとシミュレーションしておきましょう。

人件費の内訳は、下記の通りです。

【人件費の内訳例】

スタッフの給与
社会保険料
各種手当

(4)広告宣伝費

広告宣伝費は、どの程度広告を打つかによって必要経費が異なる変動費です。初期投資にも同じ項目がありますが、開業後は比較的費用を抑えられる傾向にあります。

開業準備ではホームページの制作依頼が高額になりやすいのに対し、開業後は基本的に維持費のみになるといったことが理由です。一般的な相場は1か月あたり5万~10万円程度となります。

広告宣伝費の内訳は、下記の通りです。

【広告宣伝費の内訳例】

ホームページ運営・維持費用
チラシ制作・配布費
Web広告出稿費
診察券・回数券製作費
クーポン券配布費用

(5)仕入れ費用

仕入れ費用は、衛生材料や医療用消耗品などの使用量によって毎月の支出が変わる変動費となります。開業前にまとめて仕入れた量でやりくりできれば、当分の間は補充する必要がありません。

仕入れ費用の内訳は、下記の通りです。

【仕入れ費用の内訳例】

タオル・シーツ等費用
テーピング等医療消耗品費用
衛生材料費用
物販品費用

(6)その他費用

その他費用は、整骨院の運営に当たって何を導入しているかや、何に加盟しているかによっても異なります。変動費に当たる消耗品費・従量制通信費以外は固定費となるため、事前にいくら必要かを計算しておきましょう。なお、消耗品費の一般的な相場は1か月あたり5万円前後が目安となります。

その他費用の内訳は、下記の通りです。

【その他費用の内訳例】

消耗品費
通信費
保険料
医療機器・レセコン等リース料金
協会費
組合費
導入システムの月額料金
フランチャイズのロイヤリティ料金

まとめ

整骨院を開業するためには、初期費用と3か月の運営費用を合わせて650万~1,750万円程度の資金が必要となります。自宅を整骨院に改装する場合や居抜き物件を選ぶ場合など、開業場所の選び方によっては費用を抑えることも可能です。

自己資金や親族などからの援助だけで開業費用を賄いきれない場合は、融資を受ける方法も検討するとよいでしょう。資金調達先としては、「日本政策金融公庫」「小規模事業金融公社」「県・市の保証協会」「保証協会月融資銀行」「プロパー借り入れ」などがあります。