整骨院における内装工事のチェックポイント4つ|費用を抑える方法も

2023-03-10

整骨院の開業に当たっては、「院内の内装にも自分のこだわりを反映したい」と考える人は多いでしょう。整骨院の内装では、「施術・業務のしやすさ」に加えて、患者さんにとって「居心地がよい」「通いやすい」と思ってもらえる空間づくりが大切です。同時に、開業許可を得るために必須な「構造設備基準」を満たさなければなりません。

当記事では、整骨院の内装工事で重要性の高いチェックポイント4つと、内装工事費用を抑えるコツを2つ解説します。「構造設備基準」の概要や内装工事の費用相場も簡単に紹介するため、ぜひ参考にしてください。

整骨院の開業前に理解しておくべき「構造設備基準」について

好条件の物件を選び自分好みに改装するだけでは、整骨院を開業・経営できません。整骨院を開業するためには、保健所からの開業許可が必須であり、許可を得るためには「構造設備基準」を満たす必要があります。

柔道整復師等専門学校等の関係法規の授業で習った覚えがある人も多い内容ではあるものの、改めて確認しておきましょう。例えば、東京都柏市であれば、下記のような基準を設けています。

施術所の構造設備基準

6.6平方メートル以上の専用の施術室があること。
3.3平方メートル以上の待合室があること。
施術室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること。ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りではありません。
施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。

衛生上必要な措置

常に清潔に保たれていること。
採光、照明及び換気が充分になされていること。
以下の点にも注意してください。詳細は総務企画課にお問い合わせください。
施術所は、住居や他の店舗等と構造上独立していること。(出入口を別に設ける等明確に区画すること)
施術室と待合室の区画を固定壁等で適切に仕切ること。

(引用:東京都柏市「施術所の構造設備の基準等について」/https://www.city.kashiwa.lg.jp/h-somukikaku/shiseijoho/shisei/health_hospital/mainmenu/iryojoho/sejutsusho.html

なお「構造設備基準」は都道府県や保健所によって詳細が異なる場合もあるため、注意が必要です。

特に重点的にチェックすべき項目として、「指導事項(基準)」が挙げられます。「指導事項(基準)」は、保健所が都道府県や厚生労働省へ省令の解釈を問い合わせ、エリアの状況に合わせて独自の判断により設けている基準です。

そのため、A市では問題のない構造でも、B市では許可が下りないといったケースが生じます。整骨院の内装を考える際は、開業エリアを管轄する保健所が提示する「構造設備基準」および「指導事項(基準)」の確認が必要です。

【項目別】整骨院における内装工事のチェックポイント4つ


整骨院として開業する物件を選んだ際は、基本的に内装工事を行うことになるでしょう。内装工事は、あらゆるポイントをチェックしてから実施しなければなりません。特に重要性の高いポイントが、「デザイン・レイアウト」「設備・インテリア」「受付スペース」「収納スペース」です。

ここでは、整骨院の内装工事で重要性の高い、4つのポイントを解説します。

デザイン・レイアウト

整骨院全体のデザインやレイアウトは、患者さんに与える清潔感や居心地のよさを大きく左右するポイントです。また、デザイン・レイアウトによって表現しやすいコンセプトや、ターゲットとなりやすい客層も異なるため、慎重に検討しなければなりません。

使用するカラーや素材に関しても同様であり、どれを選ぶかによって整骨院の印象は大きく変化します。下記は、使用するカラー・素材によって患者さんに与えやすい印象の例です。

グリーン
  • 安らぎ
  • 癒し
  • 穏やかさ
  • リラックスできる空間
ブルー
  • 爽やか
  • 清潔感
  • 開放感
  • みずみずしさ
ホワイト
  • 清潔感
  • 空間の広さ
  • 病院・施術所らしさ
ピンク
  • 優しさ
  • やわらかさ
  • 女性・女の子向け
  • かわいらしさ
木目調
  • ナチュラルさ
  • 落ち着き
  • リラックスできる空間

なお、複数の要素を組み合わせることも可能ですが、あまり混在させすぎると落ち着きのない空間になります。整骨院のコンセプトやターゲット層に適したデザイン・レイアウトを選び、色味に統一性を持たせることが大切です。

設備・インテリア

法で定められた「構造設備基準」を満たすことはもちろんですが、独自に取りそろえたい医療設備や施術環境を実現できるかも、しっかりと確認しましょう。特に、もともと事務所として使用していたテナントを整骨院に改装する場合は、大型の機器や家具を配置する際にデッドスペースが生じがちです。

また、整骨院を利用する患者さんにとっては、院内の段差が大きな負担となります。車椅子や松葉杖を利用する患者さんの来院を想定し、床の段差をなくす・出入り口は自動ドアにするなど、積極的にバリアフリーを取り入れましょう。

受付スペース

整骨院の内装ではつい施術スペースを中心に考えがちですが、受付スペースの重要性も忘れてはなりません。受付スペースは患者さんの応対をするだけでなく、多くの事務処理も行う場所です。実務を行いやすい広さを確保しつつ、保険証やカルテなどの個人情報が患者さん側から目視できないように配慮した設計をする必要があります。

また、受付はパソコンやプリンター、電話をはじめとした各種電子機器の使用も多めです。患者さんの足がケーブルに触れると危険なため、機器の設置場所の近くで電源を確保できるようにコンセントの数や配置も工夫しましょう。

収納スペース

書類や備品を収納するスペースも重要です。健康保険請求業務を行う際は、カルテや明細書、施術録の作成が必須となります。

カルテには保存義務があり、患者さんの最終来院から5年間は必ず保管しなければなりません。使用する書類がすぐに手に取れ、かつプライバシーが患者さんの目に触れないよう、十分なスペースが必要となります。

また、施術に使用するシーツやタオルを清潔に保管できる収納スペースも確保しましょう。

整骨院の内装工事費用を抑えるためには?


内装工事費用は、事業の開業に必要な初期投資の中でも40~50%を占めると言われるほど、お金のかかる工事です。高額な医療機器が少なめな整骨院の場合でも、平均して200万~500万円は必要と言われます。開業後の経営がスムーズに進むとは限らないことを思えば、当面の運営資金に残せる金額を多めにしてを多めに残しておきたいのが本音でしょう。

ここでは、整骨院の内装工事費用を抑える方法を2つ紹介します。

複数の工事業者に見積もりを依頼する

見積もり依頼は、複数の工事業者に行うのが鉄則です。複数社に依頼することで、希望する内装を実現するために必要な工事金額の相場を掴めるでしょう。工事業者側にも相見積もりであることを伝えておくと、業者同士の競争意識が働き適正価格が提示されやすくなります。

ただし、最も見積額が低い業者が、一番よい業者とは限らない点に注意が必要です。中には低品質な材料を使用することで工費を抑える業者や、オプションの追加を前提として見積もりを出す業者も存在します。結果として修繕費がかさんだり追加工事費が高額になったりする可能性もあるため、じっくりと話を聞いて信頼できる相手を選びましょう。

居抜き物件を探す

自分が理想とする形に近い居抜き物件を見つけられれば、工事費用を大幅に抑えられます。居抜き物件とは、前借主が整えた内装がそのまま残されている物件です。

整骨院の場合は、接骨院や整体院など同様の「構造設備基準」が適用される、同業種の居抜き物件を選ぶとよいでしょう。同業種の居抜き物件であれば、施術室や待合室の規定を満たしており、電気や水道の配備も十分なケースが多いため、工事費用だけでなく工期短縮にもつながります。

【整骨院】内装工事の費用相場

整骨院の内装工事を行う場合、おおよその費用は坪単価から見当をつけられます。

一般的に、「シンプルなデザイン」であれば整骨院の内装工事費用は「坪単価20万~30万円程度」が相場です。ただし、「ハイクラス向けにグレードの高いこだわったデザイン」にした場合は、「坪単価50万円程度」と考えておくとよいでしょう。

一般的な整骨院の広さは15坪~18坪(約50m2~60m2)程度のため、安く抑えられれば200万円台、高級感を重視すれば600万円以上となります。

まとめ

整骨院の内装工事では、「構造設備基準」を遵守した上で自院の掲げるコンセプトやターゲット層に合致するデザイン・レイアウトを選ぶことが大切です。また、業務をスムーズに行えるよう、受付・収納スペースにはゆとりを持たせることをおすすめします。

整骨院の開業には内装工事費用の他にも施術機器・備品代や広告宣伝費など、さまざまな費用が発生します。自己資金で足りない場合は、資金調達の必要性が生じるでしょう。資金調達には主に「日本政策金融公庫からの融資」「民間金融機関からの融資」の2つの方法があります。

「全国統合医療協会」では、整骨院の開業に関する資金計画の相談も含めたサポートを行っています。これから整骨院の開業を目指す人や、開業について不安がある人は、ぜひ当会へお問い合わせください。