整骨院の物件選び|リサーチすべきポイントを立地・建物ごとに解説!

2023-03-10

いかなる商売においても、立地や物件の良し悪しは経営状態に大きく影響する要因です。整骨院に関しても同様であり、立地によって集客のしやすさや客層がガラリと変化するケースは珍しくありません。

また、飲食店や事務所にはよい立地であっても、整骨院には向かない立地・物件もあるため、開業場所を選定する際は、慎重な検討が必要です。当記事では、整骨院を開業するに当たり、物件選びでリサーチすべきポイントを立地・建物別に詳しく解説します。

【立地編】整骨院の物件選びでリサーチしておくべきポイント4つ

整骨院の物件選びで最も重要なのが、「立地」です。一度店舗を設けてしまうと、想像通りに集客できなかったからといって、そう簡単には移転できません。

まずは候補となる地を複数ピックアップしておき、エリアの「特徴」「人通り」「アクセス」「競合院」の調査を徹底しましょう。ここでは、立地をリサーチする際に押さえるべきポイントを4つ解説します。

エリアの特徴

まずは、開業を検討しているエリアの特徴をリサーチしましょう。自店舗の商圏となるエリアの特徴を調査することで、来院が見込まれる患者さんの層も大まかに把握できます。

下記は、整骨院が営業することの多いエリアごとの客層の傾向です。

駅前 ●普通電車のみが停車する駅近隣の企業に勤める人や、学校に通う生徒、住宅街の住人などが主なターゲット。夕方~夜間の来院者が多め。
●複数の路線が乗り入れるハブ駅遠方からの来院患者に加え、駅近くに大型商業店舗やイベント会場などがあれば、遠出客も対象となる。
オフィス街 近隣の企業に勤める会社員や、その家族。出退勤時や昼休みなどを利用した来院者が多い。
商店街 ●大型で知名度のある商店街遠方からの患者さんや、休日に買い物をするファミリー客が主な客層。
●地域密着型の商店街日常的に商店街を利用する、高齢者や主婦、親子連れなど。近隣でクラブ活動に励む学生が利用することも
住宅街 地域に居住する高齢者が主な客層。住民の年齢層が広ければ、大人だけでなく子どももターゲット。

人通りの多さ

整骨院の開業場所を選ぶ際は、物件周辺の人通りもチェックしましょう。

多くの人にとって、何度も目にする店舗や看板は自然と記憶に残るだけでなく、親近感を抱きやすかったり好意的に捉えやすかったりする傾向です。日頃から使用することの多い通りに整骨院があれば、身体に不調を覚えた際に自院のことを思い出してもらえる可能性が高まります。

人通りの多い場所に整骨院を開けば、自院を認識してくれる人の数が増え、必然的に来院してくれる患者さんの数も増えるでしょう。

アクセスのしやすさ

整骨院のアクセス環境も、来院者の増減に関わる重大な要素に挙げられます。整骨院に来る患者さんは、自家用車やタクシーを利用する人や、公共交通機関を乗り継いでくる人がほとんどです。

車やタクシーを利用するのであれば、駐車場や乗降が可能なスペースが必要となります。電車やバスで来る患者さんも、降車後に長距離移動しなければならない整骨院は避けるでしょう。身体に不調のある患者さんがいかに気軽に来院できるかが、開業場所選びのポイントです。

競合院の数

競合院の数が多すぎる場合は、開業場所の変更もやむなしとなります。基本的に、1つのエリア内における整骨院の見込み客は一定です。限られた患者さんを多くの店舗で奪い合うことになるため、非常に厳しい競争を勝ち抜かなければなりません。

基本的に立地のよい店舗は競合院も多く、テナント料も高めです。さらに競合院に負けないよう広告宣伝に注力する必要があるため、相応の出費を覚悟しなければならないでしょう。

【建物編】整骨院の物件選びでリサーチしておくべきポイント


整骨院の物件選びは、まず立地を考えることが大切です。しかし、好条件の立地探しが必要ではあるものの、場所だけを重視して開業場所を決めるのもよくありません。いかに立地がよくても、建物に問題があればスムーズな集客や順調な経営が期待できないためです。

ここからは、整骨院の建物選びで注目すべきポイントを5つ解説します。

面積

整骨院を開業するためには、何よりも物件が法で定められた「構造設備基準」をクリアしていなければなりません。基準の詳細は都道府県や保健所によって異なるため、開業を予定しているエリアを管轄している保健所などのホームページで確認しましょう。

例えば、東京都多摩府中保健所であれば、下記のような基準を設けています。

【東京都多摩府中保健所における施術所の構造設備基準】

6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること
3.3平方メートル以上の待合室を有すること
施術室は、室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること(ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りではない)
施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること

(引用:東京都多摩府中保健所「施術所の構造設備基準等について」/https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/tamafuchu/iryou/sejutusho_shucchou/sejutusho_kozokijun.html

また、物件の広さによって施術する側だけでなく、施術される側の使い勝手も大きく異なるため、双方の視点でチェックすることが大切です。

【面積のチェックポイント】

治療スペースは十分に取れるか
バックヤードが狭すぎないか
待合室にくつろげるゆとりがあるか
駐車場・駐輪場の台数は足りるか

形状・構造

物件の面積を見る際は、数字上の大きさだけでなく、部屋の形状や構造も合わせてチェックしましょう。面積的には十分でも、実際にものを置いたり人が動いたりするとデッドスペースが生じるケースが珍しくありません。

【形状・構造のチェックポイント】

施術機器や什器を適切な場所に設置しても、問題なく人が通行できるか
バックヤードと施術室、待合室がしっかりと区切れるか
カルテや書類を厳重に保管する場所を設けられるか
必要な数のコンセントが確保できるか
不便な場所に段差や傾斜がついていないか

購入する施術機器やその他店舗什器などが決まっている場合は、物件選びの段階で入念に設置シミュレーションをすると、後悔しにくくなります。

階層

整骨院の開業場所として、可能な限り空中階や地階は避けましょう。整骨院に来院するのは、身体に不調を抱える患者さんです。

足元が不自由な人にとって「階段を上り下りしなければ通えない整骨院」は、通院候補から外れる可能性が高まります。ビル自体にエスカレーターや車いすごと乗れるエレベーターがついていれば、問題ありません。

また、路面店と比較して空中階・地階は露出が少なくなり、通行人から認識されにくくなる点も注意が必要となります。

物件状態

整骨院用の物件を探す際には、物件の状態もしっかりと確認しましょう。物件がもともとどのように使われていたか、現状がどの程度整っているかによって、改装にかかる費用が大きく異なります。

整骨院や接骨院といった施術所の物件情報の中には、居抜き物件も珍しくありません。設備や什器が残っていなくても、テナントの前入居者が施術所だった場合は、外装・内装工事にかかる費用を抑えられるケースも多々あります。資金に余裕がないという場合は、居抜き物件に絞って探すこともポイントです。

家賃

テナントを借りて整骨院を営む場合、家賃は毎月の固定費として必ず支払いが発生します。整骨院の地代家賃率としては、1か月当たりの売り上げに対して10%前後が一般的な相場です。

家賃を売上高の10%以下に抑えられれば、経営状況を健全に保ちやすくなります。開業場所探しでは、月ごとの売り上げを予測し、家賃が売上高の10%に収まりそうな物件を探しましょう。

物件種別ごとのメリット・デメリット


整骨院の開業場所となり得る物件は、戸建て・マンション/アパート・テナントの3種類があります。それぞれにメリット・デメリットが異なるため、自分の理想とするスタイルに合った物件を探すことが大切です。

物件種別ごとの主なメリット・デメリットは、下記の通りとなります。

メリット デメリット
戸建て
  • 営業許可が下りやすい
  • 施術スペースを確保しやすい
  • 看板を出せる物件が多い
  • 好条件の物件が少ない
  • 間取りが合わないことがある
  • 家賃が高い
マンション/アパート
  • 賃料を抑えられる
  • 物件数が多い
  • 施術室に流用しやすい
  • 営業許可が下りにくい
  • 効果的な看板を設置しにくい
  • 駐車場が確保しにくい
テナント
  • 営業許可は不要となる
  • 比較的好立地が多い
  • 看板を出しやすい
  • 家賃が高い
  • 前金や保証金も高額な傾向にある

まとめ

整骨院を開業する際は、自分が主なターゲットにしたい客層がいるエリアを選び、来院者を増やしやすい立地の物件を選ぶことが重要です。また、間取りが使いやすいか・患者さんが通いやすいかも考慮して、開業費用や家賃が経営を圧迫しない範囲に収まる建物を探しましょう。

開業エリアによっても、整骨院の開業に最適な物件が異なるケースは珍しくありません。自分だけのリサーチで不安な場合は、「全国統合医療協会」会員向けの開業・運営支援を利用してみてはいかがでしょうか。