整骨院・接骨院が自費診療へ移行するメリットデメリットは?
自費診療を導入する接骨院は年々増加傾向にあります。接骨院を経営している方の中には、自費診療の段階的な導入を検討している方も多いのではないでしょうか。
今回は、自費診療を導入する接骨院が増えている理由をふまえた上で、自費診療メニューを導入・移行するメリットとデメリット、さらに接骨院が自費診療メニューを導入する際のポイントを詳しく解説します。運営する接骨院で自費診療メニューの導入を少しでも検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
自費診療を導入する接骨院の増加理由
従来の接骨院は主に保険診療のメニューを提供してきましたが、最近は自費診療のメニューを提供している接骨院も珍しくありません。自費診療の導入・移行に向けて、段階的に自費診療メニューを開発・実施している接骨院も数多く存在します。
それでは、自費診療を導入する接骨院はなぜ増加しているのでしょうか。ここでは、自費診療を取り入れる接骨院が増加傾向にある理由を解説します。
保険規制の厳格化
自費診療を導入する接骨院が増えている理由の1つとして、接骨院の保険請求に対する審査・規制の厳格化が挙げられます。
多くの柔道整復師は保険請求を適切に行っていますが、過去には悪質な柔道整復師による不正請求も発生していました。また、柔道整復師の知識不足により、患者さん(お客さん)に対して誤った請求をしてしまったというケースも少なくありません。このような事例が多く発生したことから、接骨院の保険請求に関する審査・規制は厳しくなってきています。
自費診療であれば保険請求をしないため、規制や審査の影響を受けることがありません。診療メニューを自由に考案・提供できるため、自院の独自性を発揮できるとともに、他院との差別化も図れるでしょう。
競合の増加
接骨院などの柔道整復の施術所の数が年々増加傾向にあることも、自費診療を導入する接骨院が増えている理由の1つです。厚生労働省の調査によると、柔道整復の施術所数は2010年には37,997か所でしたが、2020年には50,364か所と10年間で約12,400か所も増加しています。競合となる接骨院が増えたことで、競争も激化していると言えるでしょう。
(出典:厚生労働省「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/20/dl/kekka3.pdf)
接骨院で扱える保険診療内の施術は限定されているため、保険診療のみを扱う接骨院は他院との差別化を図りにくく、競争に巻き込まれやすくなってしまいます。一方、自費診療では自院が扱う症状や施術の内容を自由に選択することが可能です。他院との差別化を図るために自費診療を導入しているという接骨院も多いことを押さえておきましょう。
接骨院が自費診療を導入・移行するメリット
自費診療を導入する接骨院が増えているとは言え、自費診療メニューの導入に対してイメージをつかめていない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、接骨院が自費診療を導入・移行する場合のメリットを4つ紹介します。メリットをふまえた上で、自院の自費診療メニューの導入を検討しましょう。
客単価が高くなる
自費診療は保険診療とは異なり、提供するメニューの価格を自分で自由に設定できます。患者さんに納得して通院してもらうためには適切な価格設定が必要になるものの、うまくマッチすれば客単価を上げることも可能です。
客単価が上がれば、1日に施術する患者さんの数が少なくても利益を出せるようになります。施術数を多くこなす必要がないため、気持ちに余裕をもって施術にあたることができる点もメリットと言えるでしょう。
ターゲットを絞り込める
保険診療の場合は、基本的にはすべての患者さんを受け入れることが求められます。自院のコンセプトや施術に対する思い、経営理念に合わない患者さんも来院する場合があるため、施術の際にストレスを感じるケースも少なくありません。
自費診療に移行すれば、自費診療のメニューや価格設定のしかたによっては、自院のコンセプトに共感してくれる患者さんや自院の雰囲気に合ったお客さんを集めることも可能です。自費診療を取り入れる際には、自院のコンセプトやターゲット層を明確化しておくようにしましょう。
枠にとらわれない施術を提供できる
接骨院で行える施術は多岐にわたりますが、保険診療で行える施術はそれほど多くありません。施術可能な症状や施術内容も限定されているため、自分の持っている豊富な知識や施術経験、熟練したスキルを最大限発揮させることは難しいでしょう。
自費診療であれば、「保険診療」という枠にとらわれない施術を自由に提供できます。自身が身につけてきた知識やスキルを存分に活かせる上に、保険診療外のさまざまな症例を経験することもできるでしょう。
施術メニュー次第で医療機器の導入費が抑えられる
接骨院では、低周波治療器や赤外線治療器、エコー検査器などさまざまな医療機器を用いて施術を行うことが一般的です。これらの医療機器には、購入やリースにかかる費用だけでなく、メンテナンス費用・電気代などの維持費にも相当な金額が必要となることを押さえておきましょう。
自費診療の場合、提供するメニューを自分で自由に決められます。自費診療においてもEMS機器の導入には費用がかかるものの、「人の手による施術」を中心として医療機器をなるべく使用しないメニューを設定するなど、施術メニュー次第で医療機器導入の取捨選択を自由に行えます。
接骨院が自費診療を導入・移行するデメリット
接骨院が自費診療に移行することには多くのメリットがありますが、デメリットもいくつかあります。
【接骨院が自由診療に移行する場合のデメリット3つ】
●リピーターを失う可能性がある
保険診療を主に行ってる接骨院の場合、「保険が適用されるから通院している」という患者さんも少なくありません。自由診療に移行すると患者さんの負担が大幅に増えるため、リピーターを失う恐れがあります。他院との差別化を図り、患者さんに選んでもらえる接骨院を目指しましょう。
●売り上げの安定化に時間を要する
自費診療メニューの導入においては、施術内容や時間、単価などの設定に迷うことも珍しくありません。実際にやってみなければ分からないことも多いため、自由診療における売り上げの安定化にも時間がかかってしまうでしょう。ある程度の資金を確保した上で、自費診療の導入を検討することをおすすめします。
●自費診療の競合が増加傾向にあり競争が激しい
保険規制の厳格化によって、自費診療メニューを提供する接骨院は増加しました。したがって競争が激しく、競合との差別化を図らなければ集客が見込めないことが実情です。患者さんのニーズを明確にしたうえで、自院ならではの魅力的な自費診療メニューを開発するなど、競争相手に打ち勝つための戦略を練る必要があることを覚えておきましょう。
接骨院が自費診療メニューを導入する際におさえておくべきポイント
接骨院が自費診療メニューの導入を成功させるためには、下記の4つのポイントを押さえて計画的に導入することが大切です。
【接骨院が自費診療メニューを導入する際におさえておくべきポイント4つ】
・自費診療へと段階的に移行する
・適切な価格を設定する
・競合優位性を明白にする
・「どんぶり勘定」に気を付ける
「自費診療メニューの導入または移行に不安がある」「自費診療の導入にあたってまとまった資金がない」といった方は、段階的な計画を立てることをおすすめします。まずは医療機器の導入にコストのかからない「人の手による施術」を中心としたメニューを導入し、患者さんから評判と生じた利益のバランスを見ながら徐々に導入メニュー数を増やすとよいでしょう。
また、適切な価格設定を心がけることも大切です。売上や利益の目標額を設定し、営業日数や1日に施術可能な患者さんの数などから逆算して客単価を決め、自費診療を行いながら微調整していきましょう。
さらに、前述の通り自費診療メニューを展開する接骨院は近年増加傾向にあります。差別化を図るためには、競合優位性を明白にしたうえで競争戦略を立てることが重要です。
保険診療と自費診療を併用する場合、不正請求や患者さんの疑問・不満の発生を防ぐためにも「どんぶり勘定」にならないよう注意してください。保険診療と自費診療の料金を明確に分けて表示し、誰もが納得できるようにしておきましょう。
まとめ
保険規制の厳格化や競合の増加といった背景から、自費診療を導入する接骨院は増加傾向にあります。自費診療には「施術内容やターゲットを自由に設定できる」などのメリットもありますが、デメリットもあるため、ポイントを押さえた上で自費診療の導入を検討するようにしましょう。
また、保険診療メニューと自費診療メニューとでは、ターゲットが大きく異なるケースもあります。医療目的・リラクゼーション目的と別ブランドに分けて立ち上げるという選択肢もあり、自費診療を導入するかどうかは慎重に考えるべきと言えるでしょう。
自費診療メニューの導入を少しでも検討している方は、接骨院経営のプロに相談するのも1つの方法です。「全国統合医療協会」では、資金計画から自院のコンセプト設計、施術内容など、自費診療に関する相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者