接骨院(整骨院)の領収書発行は義務?必要項目・作成方法も解説!

2024.10.04
接骨院(整骨院)の領収書発行は義務?必要項目・作成方法も解説!

接骨院(整骨院)を経営する際、来院したお客さんに対して領収書発行をしたほうがよいかどうかで悩む方も多いでしょう。

病院では医療費の明細が分かる領収書発行が義務付けられているものの、接骨院においても領収書発行は義務なのでしょうか。

今回は、接骨院の領収書発行は義務付けられているかどうかを説明した上で、接骨院が発行する領収書の必要項目や作成方法などを解説します。接骨院の経営者の方はもちろん、将来的に経営を考えている柔道整復師の方もぜひ参考にしてください。

接骨院(整骨院)は領収書発行が義務付けられている!

接骨院(整骨院)において、領収書の発行は2010年9月から義務付けられています。施術費用や療養費の一部負担金の支払いを受けた場合、接骨院はお客さんに対して領収書を発行しなければなりません。

接骨院の領収書発行は保険施術だけでなく、自費施術に対しても発行する必要があります。また、領収書は無償で発行するものであり、領収書発行の手数料を徴収することは認められていません。

接骨院において領収書発行が義務化された背景には、柔道整復療養費の不正請求が相次いでいる問題が挙げられます。

柔道整復療養費は、接骨院が保険施術を行った場合に、お客さんが支払った自己負担分を除く残額を保険者(健康保険組合など)に請求する仕組みです。

しかし、2009年に会計監査院が柔道整復療養費の調査を行ったところ、柔道整復療養費の請求の約6割が不適正な内容であったことが判明しました。そのため、厚生労働省は不正請求対策の一環として、お客さんが施術費用を確認できるよう領収書発行の義務化を行っています。

【接骨院】領収書に記載すべき項目

接骨院の領収書では、下記の項目を記載する必要があります。

お客さんの氏名
領収した日付
保険施術の合計金額
一部負担金の金額の内訳
保険外施術の金額の内訳
一部負担金と保険外施術(自費診療の施術)の合計金額
施術所名と住所
施術管理者の名前と印鑑

記載すべき項目に漏れが発生しないように、あらかじめ領収書のテンプレートを作っておくことが大切です。

また、保険適用外である自費診療の施術を行った場合は、保険施術の一部負担金と、保険外施術の金額が区別できるように記載しなければなりません。

2つの金額を区分しないと、領収する金額の中でいくらが保険施術の一部負担金であるかが分からず、不正請求につながる可能性があるためです。

【接骨院】領収書の作成方法

接骨院の領収書は、お客さんの来院ごとに発行することが基本です。領収書を渡し忘れたり、接骨院側の都合で1か月分の領収書をまとめて発行したりといった行為は避けましょう。

領収書に記載する各種金額は、下記の手順で計算・記入を行います。

1 療養費の算定基準に基づいて保険施術の合計金額を計算し、領収書に記入する。
2 1の金額にお客さんの負担割合(1~3割)を乗じた上で、一の位を四捨五入し、一部負担金の金額として10円単位で領収書に記入する。
3 保険外施術の金額を計算し、領収書に記入する。
4 2と3の金額を足して、一部負担金と保険外施術(自費診療の施術)の合計金額に記入する。

その他の記載事項も忘れずに記入することで領収書の作成は完了です。必要な記載事項が記入されていれば、レシートタイプの領収書を使用することも認められています。

厚生労働省では領収書のテンプレート例を公開しています。領収書のテンプレートを作成する際は、厚生労働省の例を参考にすることがおすすめです。

(出典:厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/01h.pdf#page=5

2022年10月からは明細書の発行も一部義務化|対象となる接骨院は?

接骨院では2022年10月1日から、領収書だけでなく明細書の発行も義務化されました。

しかし、明細書の発行義務化はすべての接骨院に対して適用されるわけではありません。2022年10月1日の義務化では、下記の2つの条件を満たす接骨院のみが適用される対象となっています。

(1)明細書発行機能があるレセコンを使用している。

レセコンはレセプトコンピュータの略称で、レセプト(療養費の明細書)の作成に使用するソフトウェアのことです。お客さんに明細書を発行するには金額計算から書面作成までができる機器が必要であるため、明細書発行機能があるレセコンの使用が条件となっています。

(2)常勤職員の人数が3人以上である(後に廃止)。

常勤職員とは、接骨院が作成した就業規則で定める勤務時間のすべてを勤務する者のことです。常勤職員には柔道整復師だけでなく事務職員なども含まれます。

(出典:厚生労働省「柔道整復療養費の明細書の無償交付について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/jyuudou/ryouyouhi_kouhu.html
(出典:厚生労働省「柔道整復施術療養費に係る疑義解釈資料の送付について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/240603_01.pdf

2つの条件を満たす接骨院は、柔道整復療養費の施術を行った場合に、窓口で明細書を無償交付することが義務付けられています。

また、明細書の発行義務化が適用されない接骨院であっても、明細書を無償で交付することを届出した場合は、明細書を発行する必要があります。

さらに、2024年4月には明細書発行の義務化対象の拡大が厚生労働省より発表されました。従来の条件であった「常勤職員の人数が3人以上である」がなくなり、「明細書発行機能があるレセコンを使用している」のみで条件を満たすように変わっています。

なお、明細書発行の義務化対象の拡大は、お客さんへの周知期間や、保険者・施術管理者・厚生局の届出準備期間などを踏まえ、2024年10月1日施行となっています。

(出典:厚生労働省「柔道整復療養費の令和6年料金改定(案)」/https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001249728.pdf

接骨院の領収書に関するよくある質問(Q&A)

接骨院が領収書の対応をするときに通常のケースとは違っていて、「領収書発行をどうすればよいか分からない」という事態になることは少なくありません。

接骨院の領収書発行は義務化されているため、さまざまなケースを想定して、正しく領収書の対応ができるようにしましょう。

以下では、接骨院の領収書に関するよくある質問を3つ取り上げて、それぞれの回答を説明します。

Q1.キャッシュレス決済時の領収書はどうする?

現金支払いと同様に、キャッシュレス決済時にも領収書を発行しなければなりません。

接骨院のキャッシュレス決済には下記のような種類があります。

クレジットカード
デビットカード
QRコード決済
バーコード決済
電子マネー

たとえばQRコード決済では決済金額が履歴に表示されるのみであり、接骨院の領収書の必要項目を満たせません。

いずれの決済方法であっても、接骨院は必要項目をすべて記載した領収書を発行する必要があります。

Q2.領収書は再発行できる?

お客さんが領収書を紛失などした場合であっても、領収書の再発行はできません。領収書を再発行すると、経費の水増し請求に使用されたり、二重計上などが行われたりするおそれがあるためです。

お客さんから領収書の再発行を依頼された場合は、領収書ではなく領収証明書を発行しましょう。

また、明細書は再発行できます。明細書は料金の内容などを確認するための書類であり、領収書のように支払いを証明する機能を持たないためです。

Q3.お客さんから領収書のまとめ発行を求められた場合はどうする?

接骨院の領収書は来院ごとに毎回発行することが原則であるものの、お客さんの求めに応じて月単位でまとめて発行しても問題ありません。

ただし、領収書をまとめて発行する場合は、施術日ごとの一部負担金を明示することが望ましいとされています。

また、お客さん側の都合ではなく、接骨院側の都合でまとめて発行することは認められていないため注意してください。

接骨院の窓口業務を効率化するためには?

窓口業務を効率化したいときは、レセコンの導入がおすすめです。

レセコンを導入すると、施術内容を入力することで療養費の金額計算を自動的に行えるようになり、領収書・明細書をスムーズに発行できます。手入力での金額計算や書類作成をする必要がなくなって、業務負担を削減できるでしょう。

また、手入力での金額計算で起こりがちな計算ミスも、レセコンを使用すれば発生しません。領収書・明細書発行などの窓口業務の効率化を考えている方は、レセコンの導入を検討しましょう。

まとめ

接骨院(整骨院)では領収書発行が義務化されています。経営者の方は、必要項目をすべて記載した領収書を発行できる体制を整えなければなりません。

明細書についても発行義務化の動きが拡大しており、明細書発行機能があるレセコンを使用している院では明細書発行にも備える必要があります。

全国統合医療協会では、レセコン導入支援をはじめとした接骨院向けの各種サービスを提供しております。窓口業務効率化のためにレセコン導入を検討している方は、全国統合医療協会にご相談ください。

この記事の監修者

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中村 崇男

昭和44年東京生まれ。昭和63年都内整骨院を勤務し、東京柔道整復専門学校を卒業後、平成23年一般社団法人全国統合医療協会を設立。鍼灸師・柔道整復師の社会的地位と健康医療福祉の更なる向上を目標に幅広い分野で活動中。
一般社団法人全国統合医療協会理事長
公益財団法人明徳会清水ヶ丘病院理事長