【整骨院】赤字経営に陥る理由とV字回復に向けた方法・ポイント

整骨院は地域の健康を支える重要な存在ですが、近年では赤字経営や倒産に陥るケースが増えています。経営知識の不足や立地条件、保険収入への依存など、複数の要因が重なることで、運営が厳しくなることも少なくありません。
赤字経営からの立て直しには、固定費の見直しや利益を生む部分への投資など、戦略的な対応が不可欠です。これらを適切に行わないと、回復の機会を逃し、経営がより悪化するリスクもあります。
そこで今回は、整骨院が赤字に陥る主な理由や、V字回復に向けた具体的な方法、黒字経営を維持するためのポイントまで詳しく紹介します。経営改善のヒントを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 整骨院の倒産件数は増加している?

全国にある柔道整復の施術所(整骨院)は、2022年度で50,916か所、2024年度で50,924か所と、数字だけを見るとほぼ横ばいで安定している印象を受けます。
出典:厚生労働省「3 就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所」
しかし実態としては、開業する整骨院の数とほぼ同じだけ倒産も発生していると考えられます。つまり、新規開業による増加分が倒産による減少分を相殺している状況です。
整骨院の倒産が増える背景には、柔道整復師の増加による施術所数の増加と、それに伴う競争の激化があります。新たに開業した整骨院同士で顧客を奪い合う形となるため、1か所あたりの売上が減少し、経営が厳しくなるケースが目立ちます。
2. 整骨院が赤字経営や倒産に陥ってしまう主な理由

整骨院の倒産や赤字経営の背景には、競争の激化が大きく関わっています。とは言え、競争が激化する中でも安定して黒字を維持できている整骨院が多く存在するのも事実です。
倒産を最大限回避するためには、赤字経営に陥ってしまう理由を把握し、常に対策を講じておくことが重要と言えます。
そこで次に、整骨院が赤字経営や倒産に陥ってしまう主な理由を4つ紹介します。
2-1. 「経営」に関する知識が不十分である
たとえどれほど施術技術に自信があっても、経営に関する知識が乏しいと、売上・コスト管理や集客戦略、スタッフ教育といった重要な判断が場当たり的になりやすくなります。感覚頼りの経営では、売上が伸び悩んだ際の立て直しが難しく、黒字化までに時間がかかることも少なくありません。
さらに、利益構造や数字の読み方を把握していなければ経営状況の悪化に気づくのが遅れ、損失が拡大するリスクも高まります。
2-2. 立地条件が良くない
立地条件の悪さも、整骨院の経営が悪化してしまう大きな要因です。「駅から遠い」「お店の場所が分かりづらい」「近隣に競合院が多数ある」といった単純な問題のほか、メニューと地域特性のミスマッチも影響します。
例えば、若年層向けメニューを多く展開していても、周辺に高齢者が多く住んでいれば集客は伸びません。また、「駅から遠いのに、近隣に駐車場がない/狭い」「高齢者向けの施術メニューをメインとしているのに、バリアフリー設計ではない」という場合は来院ハードルが大幅に高まり、客入りも悪くなる傾向にあります。
2-3. 保険収入に依存している
整骨院経営を保険診療の収入だけに依存すると、顧客数に対して収益が頭打ちになりやすいことに注意が必要です。
近年は、保険取り扱いに関する規制や審査も厳しくなっており、将来的な制度変更によって売上が大幅に下がるリスクもあります。
自費メニューや自由診療の導入に消極的な場合は利益率の改善が難しく、赤字に転じやすくなると言っても過言ではないでしょう。
2-4. 従業員の入れ替わりが激しい
スタッフの離職率が高い院では、常に新しい人材を採用・教育し続ける必要があり、人件費や教育コストが膨らみます。
さらに、既存スタッフに指導負担がかかることでモチベーションの低下や残業増加という悪循環が生まれやすく、接客や施術の品質も不安定になりがちです。
その結果、顧客満足度やリピート率が下がり、従業員数に見合った売上が確保できず、赤字経営に陥りやすくなります。
3. 整骨院が赤字経営から立て直すための方法

たとえ赤字経営に陥った整骨院でも、固定費の見直しや利益に直結する施策への投資を行うことで、立て直しは十分に可能です。
スムーズな立て直しを目指すためには、経営の土台を整えつつ売上を伸ばすための戦略的な行動を取ることが重要です。
ここからは、整骨院が赤字経営から立て直すための具体的な方法を、「固定費の見直し」と「利益につながる部分への投資」の2つの観点から解説します。
3-1. 固定費の見直し・削減を行う
赤字経営から立て直す際、まず取り組むべきは固定費の見直しです。無駄な支出を削減することで、経営の負担を軽減し、改善の余地を生み出せます。
具体的には、毎月発生しているコストのうち、必須ではないものや削減可能なものを明確にすることが重要です。代表的な費用項目としては、下記が挙げられます。
講習・セミナー費用 | 参加頻度や効果を見直し、不要なものは解約する |
---|---|
賃料 | 減額交渉や契約条件の見直しを行う |
光熱費・通信費 | 使用状況に応じて契約先・プランの見直しを行う |
保険料 | 必要性を再確認し、過剰な契約は削減する |
消耗品・備品費 | 購入量・頻度を適正化する |
固定費の削減は、赤字状態を改善する最も即効性のある方法です。ただし、必要な設備やサービスまで削ると業務やサービス品質に影響を及ぼすおそれもあるため、削減対象を慎重に判断することが重要です。
3-2. 利益につながる部分に投資する
赤字経営に陥った際は、「いかに出費を抑えるか」ということばかりに重視してしまう方も多くいますが、利益につながる部分に関してはむしろ積極的に投資するのがおすすめです。
積極的な投資が推奨される具体的な施策は、下記が挙げられます。
● 集客・広告(チラシ・ポスティング、ホームページ制作、SNS運用など)
● 自費メニュー開発
● 立地改善
● 業務ツール導入(顧客管理ツール、レセコンシステムなど)
特に、集客や広告への投資は顧客数や売上増加に直結するため、場合によっては借り入れも視野に入れつつ、惜しみなく投資するのも有効でしょう。
とは言え、投資は必ずしも成功するわけではなく、失敗がつきものです。投資する際は一度に全額を投じるのではなく、資金を分割して段階的に投資することで、万が一失敗したときのリスクを最小限に抑えられます。
4. 整骨院の黒字経営を維持するためのポイント

赤字から立て直した後も、黒字経営を維持するには日々の経営状況を常に把握することが不可欠です。キャッシュフローを明確に管理し、無駄な支出を抑えながら利益を確保できる体制を整えることが基本となります。
また、顧客のニーズや来院傾向は常に変化するため、V字回復につながった施策をそのまま維持するだけでは不十分です。
例えば新規顧客が増加した場合には、リピート率を高める施策に注力したり、季節や流行に応じたメニュー開発や広告戦略を適宜調整したりすることが重要です。
さらに、スタッフ教育や働きやすい環境づくりも継続的に行うなど、サービス品質と顧客満足度の維持に向けた取り組みを実施し続けることで、安定した黒字経営を実現できるでしょう。
まとめ
整骨院の経営は、技術力だけでは黒字を維持することが難しく、立地条件や保険収入への依存、固定費の管理、スタッフ運営などさまざまな要素が影響します。
赤字経営に陥る主な理由を把握し、固定費の見直しや利益に直結する投資を行うことで、経営の立て直しが可能です。さらに、経営状況を常に把握し、顧客ニーズに合わせた施策を継続することも、黒字経営の維持に向けた重要なポイントとなります。
全国統合医療協会では、整骨院の開業支援から運営業務における幅広いサポートまで提供しています。経営改善や運営に関する悩みがある整骨院の方は、ぜひご相談ください。
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