【整骨院・接骨院】レセプトの作成方法|事前の手続きや注意点も

2023-06-23

整骨院・接骨院のレセプトとは、保険者に療養費を請求する際に使用する明細書です。整骨院・接骨院で行う一部の施術には、健康保険が適用されます。健康保険が適用される施術(以下、保険施術)の対価を正しく受け取るためには、レセプトの作成が欠かせません。

当記事では、レセプトを作成する前にすべき準備や算定基準を解説します。レセプトを作成する際の注意点も知り、整骨院・接骨院の経営に役立てたい方はぜひ参考にしてください。

整骨院・接骨院でのレセプト作成前にすべき準備

多くの整骨院・接骨院では、保険施術と自費メニューの両方を提供します。一定の条件を満たす脱臼・打撲および捻挫(肉ばなれを含む)への施術が、保険施術の一例です。柔道整復師には「受領委任」が認められていることから、保険施術を行った場合にはレセプトを作成して、療養費を請求します。

(出典:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/index.html

ただし、施術所が受領委任を行うためには、いくつかの手続きが必要です。ここからは、レセプトを作成して療養費を請求するために必要な準備について紹介します。

受領委任契約の締結

受領委任とは、施術所が顧客に代わって保険者に対し、自己負担分を除く費用を請求することです。施術所が受領委任を行うためには以下いずれかの方法で「受領委任契約」を締結する必要があります。

(1)公益社団法人の柔道整復師会に加入し、団体協定を締結する
(2)施術所管轄の厚生局事務所等に申し出る

上記の「2」で手続きする場合の提出書類は、都道府県によって異なる可能性があります。書類の準備を進める前に問い合わせ、詳細を確認しましょう。手続きが完了すると、療養費請求を行う際に利用する「契約記号番号」が発行されます。

(出典:関東信越厚生局「柔道整復師が受領委任の取扱を受けようとするときの申し出の手続きの流れ」/https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/judo/nagare_1.html

各管轄への届け出提出

厚生局事務所等への申し出によって発行される契約記号番号は、社保・国保・後期高齢などの保険者へ療養費を請求する際に利用する番号です。そのほかの保険者に療養費請求を行うためには別途、各管轄に対する届け出が必要となるケースもあるため、注意しましょう。

例えば、国家公務員関係の保険者の場合は共済組合連盟所定の用紙に必要事項を記入して、届け出する必要があります。自衛官関係の保険者では防衛省の管轄部署に連絡し、所定の方法による届け出が必要です。

「地方公務員関係の保険者に対する手続きが必要か」は地域によって異なることから、地方公務員共済組合協議会に確認しましょう。手続きが必要な地域では、所定の用紙に必要事項を記入して届け出を行います。

【項目別】整骨院・接骨院におけるレセプトの算定基準

療養費を請求して支払いを受けるためには、レセプトの算定基準を十分に理解しておく必要があります。算定基準には詳細なルールが多くある上、レセプトを正しく作成できていない場合、療養費が支払われません。

以下では、整骨院・接骨院を経営する人が最低限覚えておきたい主な算定基準と概要を紹介します。

初回来院時に算定できるもの

下記は、顧客の初回来院時に算定できる主な項目です。

●初検料
初検料とは、顧客を初めて施術した際に算定できる項目です。初検料は初回来院時に、「負傷がない」と判断した場合にも算定できます。

●初検時相談支援料
初検時相談支援料とは、施術に伴う日常生活の注意点や今後の施術計画などを詳細に説明した場合に請求できる項目です。ただし、初回来院時に「負傷がない」と判断した場合には、請求できません。

●休日加算
休日加算は、やむを得ない事情によって日曜・祝日・12月29日~1月3日の来院に対応した場合に算定できます。

●時間外加算・深夜加算
施術所の施術時間以外の来院に対応した場合は時間外加算、施術時間以外かつ22時~6時の来院に対応した場合は深夜加算を算定できます。ただし、時間外加算と深夜加算の重複加算は行えません。

●再検料
再検とは、来院が2回目以降の顧客に対して行う、症状の聞き取りや検査のことです。顧客に対して再検を行った際には、初回の1回のみ再検料を算定できます。

(出典:静岡県健康福祉部「柔道整復師の施術に係る療養費の手引き」/https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/024/899/r0503_jusei.pdf

2回目の来院以降も算定できるもの

2回目以降の来院では主に、以下の項目を算定できます。

●往療料
往療料は、やむを得ない事情によって顧客の依頼に応じ、自宅を訪問して施術した場合に算定できる項目です。定期的もしくは計画的に自宅を訪問する場合には、往療料を算定できません。

●電療料
電療料とは、後療において電気光線器具(低周波、高周波など)を使用した施術を行った場合に算定できる項目です。ただし、骨折・不全骨折・脱臼は顧客が負傷した日から7日間、打撲・捻挫・不全脱臼は同様の日から5日間は電療料を算定できません。

●罨法料
後療において温罨法(全身もしくは身体の一部を温める施術)や冷罨法(寒冷刺激によって炎症を和らげる施術)を行った場合には、罨法料を算定できます。ただし、温罨法と電気光線器具を使用した施術を同時に行った場合には、電療料の加算を算定するルールです。

●捻挫・打撲・挫傷
初検で捻挫・打撲・挫傷と判断した場合は部位単位で、施術料を算定できます。すでに医療機関やほかの整骨院などにかかっている顧客は、現に施術を必要としている場合に限り、施術料の対象です。現に施術の必要がない顧客の場合は、「後療料」などにより算定します。

(出典:静岡県健康福祉部「柔道整復師の施術に係る療養費の手引き」/https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/024/899/r0503_jusei.pdf

骨折や脱臼の算定基準

骨折や脱臼には捻挫や打撲と異なる算定項目がいくつかあります。レセプトを正しく作成するためにも、主な項目の概要を理解しておきましょう。

●骨折・脱臼
骨折の施術料は、以下の部位を単位として算定します。関節骨折や脱臼骨折の扱いも、通常の骨折と同様です。

1.鎖骨
2.肋骨
3.上腕骨
4.前腕骨
5.大腿骨
6.下腿骨
7.手根骨、足根骨
8.中手骨、中足骨、指(手・足)骨

(出典:静岡県健康福祉部「柔道整復師の施術に係る療養費の手引き」/https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/024/899/r0503_jusei.pdf

脱臼は以下の部位を単位として、算定するルールです。

1.顎関節
2.肩関節
3.肘関節
4.股関節
5.膝関節
6.手関節、足関節、指(手・足)関節

(出典:静岡県健康福祉部「柔道整復師の施術に係る療養費の手引き」/https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/024/899/r0503_jusei.pdf

●金属副子等加算
金属副子等加算は、骨折や脱臼した部位を固定するために固定材料(金属副子、合成樹脂副子、副木、厚紙副子など)が必要で、実際に使用した場合に算定できる加算です。経過の途中で固定材料の交換を行わなければならない場合は2回まで、金属副子等加算を算定できます。

●施術情報提供料
施術情報提供料は、以下すべての条件を満たす場合に算定できる項目です。

患者に骨折・不全骨折・脱臼の応急施術をした
保険医療機関での診察が必要と認められる場合
紹介に基づき、実際に患者が保険医療機関を受診した
紹介状の年月日=初検日である
紹介先の保険医療機関には、事前に連絡調整した
施術情報提供紹介書を交付し、写しを施術録と支給申請書に添付した

(出典:静岡県健康福祉部「柔道整復師の施術に係る療養費の手引き」/https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/024/899/r0503_jusei.pdf

なお、レントゲン撮影を受けるために医療機関を紹介したり、紹介先で「捻挫、打撲、挫傷」と判断されたりした場合は、原則として施術情報提供料を算定できません。

●柔道整復運動後療料
柔道整復運動後療料は、骨折・不全骨折・脱臼に関する施術後に運動機能の回復を目的とした運動療法を20分程度実施した場合に算定できる項目です。柔道整復運動後療料は、負傷日から16日間以降で1週間に1回程度、月に5回まで算定できます。

(出典:静岡県健康福祉部「柔道整復師の施術に係る療養費の手引き」/https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/024/899/r0503_jusei.pdf

整骨院・接骨院におけるレセプト作成時の注意点

レセプトに不備があると、審査支払機関から返戻されて、再請求する手間がかかります。その上、療養費の受け取りが翌月以降に持ち越されて、経営を圧迫する事態になりかねません。

整骨院・接骨院の経営を安定させるためには、下記の注意点を意識してレセプトを作成しましょう。

●近接部位に施術を行う場合の算定方法
近接部位に施術を行う場合の施術料には詳細なルールがあり、すベてを算定できない可能性があります。例えば、左右の肩関節捻挫・頸部捻挫に施術を行う場合は「左右の肩関節捻挫」のみにより、算定するルールです。

(出典:厚生労働省近畿局「柔道整復師集団指導」/https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/shinsei/shido_kansa/judo/000256669.pdf

●3部位以上を施術する場合の算定方法
3部位以上を施術する場合は、4部位目以降の以下項目を算定しません。3部位目の以下項目は、100分の60を掛けた料金で算定する必要があります。

・後療料
・温罨法料
・冷罨法料
・電療料

(出典:静岡県健康福祉部「柔道整復師の施術に係る療養費の手引き」/https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/024/899/r0503_jusei.pdf

そのほか、初検日から3か月以上にわたって捻挫・打撲・挫傷の施術を行う際には摘要欄に、長期理由を記載する対応が必要です。もしくは長期施術継続理由書をレセプトに添付し、継続的に施術しなければない理由を提示しましょう。

まとめ

レセプトを作成して保険者に療養費を請求するためには事前準備として、受領委任契約を締結する必要があります。必要に応じて厚生局事務所等以外へも届け出し、各種保険者への手続きを行いましょう。

整骨院・接骨院が療養費を実際に請求する際には算定基準を意識して、正しくレセプトを作成する必要があります。レセプトの返戻によって整骨院・接骨院の経営に支障が生じる事態を回避するためにも、算定基準や注意点を十分に理解した上で、正しく作業を行いましょう。