整骨院に必須の施術録やカルテの作成・保存|集客活用のポイント

2023-06-23

整骨院を健全に運営するためには、正しく施術録を記載して所定の期間保存する必要があります。しかし、これから整骨院を開業する方の中には、施術録の記載理由や作成方法が分からず悩む方もいるでしょう。

そこで今回は、整骨院では施術録の作成が必須である理由と保存期間の考え方について紹介します。施術録に記載すべき項目や作成方法についても紹介するため、自院の開業に必要な知識を習得したい人はぜひ参考にしてください。

整骨院では施術録の作成・保存が必須となる

整骨院における施術録は、保険施術を行った際に療養費を請求する際の根拠として利用する資料です。そのため、整骨院には保険施術に関する施術録を適切に作成し、施術完了の日から5年間保存する義務があります。

柔道整復師には「受領委任」が認められていることから、整骨院で保険施術を受けた顧客は基本的に自己負担分しか支払いません。自己負担分を除いた費用は、整骨院がレセプト(療養費を請求する際に使用する申請書)を作成し、保険者から回収するルールです。
(出典:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/jyuudou/index.html

レセプトは施術録に記載された情報を参照し、作成を進めることが必要です。施術録がなければレセプトを正確に作成できず、療養費の請求が通りません。

また、施術録は請求内容の正当性を証明するための重要な資料です。悪質な整骨院による療養費の不正請求が問題視されていることもあり、健全に経営している施設もいつ、疑惑を掛けられるかは分かりません。掛かった疑惑を晴らすためには施術録を提示し、正当性を証明する必要があります。

施術録は顧客の重要な個人情報が記載された書類であるため、本来は安易に公開できません。しかし、整骨院が保険施術を行っており、保険者から提示や閲覧を要求された場合は、例外として応じることが必要です。

自費メニューの施術録記載について

整骨院の自費メニューには、施術録を作成・保存する義務やルールがありません。しかし、「自費メニューは施術録が不要」などのルールもないため、保険施術同様に対処するとよいでしょう。

自費メニューに限ったことではないものの、施術録に記載した情報は、施術内容の備忘録や証明資料として利用できます。万が一顧客からクレームを受けた場合は、施術録に記載された必要な情報を提示して、整骨院の正当性を示すことが可能です。

さらに、施術録は顧客情報を管理するデータベースとしても活用できます。適切に施術録を作成しておけば、「自費メニューの割引券を添えて、誕生日の顧客にお祝いメールを送付する」などの施策を取り、集客を図ることが可能です。

整骨院の施術録の保管期間は「5年間」

整骨院の施術録は転帰(施術の中止・治癒・転院)が付いた日から5年、保存する義務があります。施術の対象部位が複数ある場合には、最後に転帰が付いた日を起算点と考えましょう。

5年もの長期間施術録の保存が必要な理由の1つは、施術証明の発行依頼に備えるためです。しばらく来院していない顧客から依頼を受けた際、すぐに対応できなければ信頼を失いかねません。仮に整骨院を廃業しても義務は免除されないため、必ず5年間施術録を保存してください。

【保険診療・自費メニュー別】整骨院の施術録に記載すべき主な項目

施術録が適切に作成されていない場合は、本来の役割を果たせません。保険者に提示した施術録の信頼度が低い場合は不正受給の疑惑が晴れず、返納を要求されるリスクもあります。

整骨院の施術録に記載すべき主な項目を以下で把握し、経営上のリスクを軽減しましょう。

保険診療

保険診療の施術録には、療養費の請求に必要な情報を漏れなく記載する必要があります。以下は、保険診療の施術録の主な記載項目です。

・受給資格の確認(氏名、性別、生年月日、保険の種類、保険者番号など)
・負傷名
・負傷の状況、程度、症状
・負傷年月日、時間、原因
・初検年月日
・施術終了年月日
・施術回数
・転帰(治癒、中止、転院から選択)
・同意した医師の氏名、同意年月日
・施術の内容、経過
・施術明細

保険の種類や保険者番号は、被保険者証から転記する方法で記載します。負傷名や負傷の状況などは顧客から正しく聞き取りを行い、施術録に記載してください。聞き取りを行う際には「いつ、どこで、なぜ負傷したか」も確認して、施術録内に記録として残しましょう。

(出典:厚生労働省「柔道整復師 集団指導」/https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/gyomu/bu_ka/iryo_shido/040808_001.pdf

自費メニュー

自費メニューの施術録には画一的な推奨フォーマットがないため、整骨院の運営に必要な項目を検討し、テンプレートを作成しましょう。以下は、自費メニューの施術録に含める項目の具体例です。

・顧客を特定する情報(氏名、性別、生年月日、住所、メールアドレスなど)
・負傷の状況、程度、症状
・施術経験の有無
・利用したコース
・施術明細

上記のほかには、他のスタッフにも共有することが望ましい顧客の情報を施術録内に記載する方法もあります。例えば、家族構成・職業・趣味などを記載しておくと、次回以降に来院した際の顧客とのコミュニケーションに役立つでしょう。

整骨院の施術録の種類|それぞれの特徴・メリット

整骨院の施術録は作成方法により、紙施術録と電子施術録に分類できます。二種類の施術録にはいくつかの違いがあるため、特徴を正しく理解した上で、整骨院に合うほうを選択しましょう。

ここからは、2種類の施術録について、それぞれ特徴とメリットを紹介します。

紙施術録

紙施術録とは、施術録のテンプレートを印刷し、手書きで記載するタイプの施術録です。以下は、紙施術録を利用するメリットを示します。

【紙施術録を利用するメリット】

・導入・運用コストが安い
・停電・災害時にも利用できる

紙施術録は用紙とペンのみで作成できることから導入や運用コストが安く済み、停電や災害リスクに強い特徴があります。

ただし、紙施術録の保存には一定の収納スペースが必要です。また、情報を手書きする際にミスが起こるケースもあるため、十分に注意して作成する必要があります。

電子施術録

電子施術録とは、紙施術録に手書きしていた情報・医療機関からの紹介状・画像データなどを電子化し、一元管理する仕組みのことです。以下は、電子施術録を利用するメリットを示します。

【電子施術録を利用するメリット】

・保管スペースを節約できる
・レセプトの作成作業を効率化できる

電子施術録の情報はコンピュータ内やシステム上に保管するため、スペースの節約が可能です。また、電子施術録を利用すると「手書きの文字が読みにくい」などの理由により、作成作業に時間がかかる事態を回避できます。

ただし、スタッフに電子施術録の操作方法を覚えさせるためには、一定の研修時間が必要です。また、電子施術録を安全に利用するためには、ITスキルを持つ人材によるメンテナンスや管理が欠かせません。適任者がいない場合は新規人材を確保する必要があるため、コストがかさむリスクもあります。

整骨院の施術録を集客・マーケティングに活用するポイント

整骨院の集客・マーケティングを成功させるためには、顧客の属性を把握し、適切な訴求を行うことが大切です。施術録は顧客の属性を把握するためのツールとして機能するため、有効に活用することで、整骨院の集客力は高まります。

施術録を利用して整骨院の集客力を高めるためのポイントは、以下2点です。

●最終来院日からの期間に注目する
来院しなくなる顧客の中には、整骨院の存在や施術の必要性を忘れている人もいます。施術録を見て最終来院日から一定期間経過している顧客にはアフターフォローを行い、リピーターの獲得につなげましょう。

●自院の顧客層に合う自費メニューを検討する
他院で人気の自費メニューを無計画に導入しても、自院の顧客に響くとは限りません。自費メニューを導入する際には施術録から自院に多い顧客の年代や性別を把握して、高い需要が見込まれる内容を検討しましょう。

まとめ

整骨院には保険施術に関する施術録を適切に作成し、5年間保存する義務があります。自費メニューには施術録の作成義務がないものの、保険施術同様に対処すると安心です。整骨院の施術録の作成方法には紙施術録と電子施術録があるため、特徴を踏まえた上で、自院に合うものを選択しましょう。

全国統合医療協会では、整骨院の開業にまつわるさまざまなサポートを提供します。施術録の作成作成や保存に係る運用方法で失敗したくない方は、ぜひ全国統合医療協会に相談ください。