施術管理者とは?業種別の要件と共通点・相違点を徹底解説!
柔道整復師やはり師・きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師(あはき師)が施術管理者になるには、業種別の要件を満たす必要があります。柔道整復師やあはき師を目指している方だけでなく、すでにそれぞれの国家資格を持っている方も対象です。
今回は、施術管理者の概要と要件が追加された背景、施術管理者になるための要件について解説します。業種別に各要件の概要を詳しく説明するため、施術管理者になろうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
施術管理者とは?
施術管理者とは、施術所で発生する療養費の受領委任を取り扱う業務を管理する人のことです。療養費には、柔道整復師・はり師・きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師による施術で発生した費用すべてが含まれます。
以前は、柔道整復師やあはき師の資格があれば施術管理者になって施術所を開業できました。しかし、2018年4月から柔道整復師の施術管理者に要件が追加され、2021年1月からはあはき師にも要件が追加されました。
柔道整復師・あはき師の施術管理者の要件が変わったことで、現在は資格取得したからと言って施術所をすぐに開業できない仕組みになっています。
施術管理者要件が追加された背景
以下では、施術管理者の要件が追加された背景を業種別に解説します。
●柔道整復師
柔道整復師の施術所では、療養費の不正請求事案が度々問題になっていました。不正受給が頻発した原因の1つが、施術管理者の知識・経験不足です。資格取得後すぐに施術所を開業する場合、療養費の受領委任を取り扱う業務への知識・経験が不足しやすい傾向にありました。
施術管理者の要件追加の主な目的は、保険請求の対象判断や制度の正しい理解が進み、柔道整復師の質が向上することです。
(出典:厚生労働省「施術管理者の要件について(周知のご依頼)」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/180305-02.pdf)
●はり師・きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師
あはき師の施術所では、療養費は償還払いが原則ではあるものの、患者の負担軽減のために療養費の請求・受領を委任する代理受領を選択することも可能です。しかし、あはき師には施術者を登録・管理する仕組みがなく、不正請求の多さが問題視されていました。
施術管理者の要件追加の主な目的は、指導監督の仕組み導入と施術管理者の質の向上により、療養費の適切な請求が行われることです。
(出典:厚生労働省「あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費の見直しについて」/https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000157961.pdf)
(出典:厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費に関する受領委任の取扱いについて」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/180612-01.pdf)
【柔道整復師・あはき師】施術管理者になるための要件
柔道整復師・あはき師の施術管理者になるための要件は、下記の2つです。
・実務経験
・施術管理者研修の受講
(出典:厚生労働省「施術管理者の要件について(周知のご依頼)」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/180305-02.pdf)
(出典:厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費の受領委任を取り扱う施術管理者の要件について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/20200304_01.pdf)
施術管理者になるための要件には、柔道整復業とあはき業で共通点と相違点があります。
ここでは、業種別に施術管理者になるための要件を詳しく解説します。
実務経験
柔道整復師・あはき師の施術管理者になるには、それぞれが定義する実務経験が必要です。
柔道整復師の施術管理者に求められる実務経験の詳細は、以下の通りです。
【柔道整復師】
●実務経験の内容
施術所での雇用契約期間のうち、施術管理者または柔道整復師として勤務した期間を実務経験とみなします。
●実務経験の期間
実務経験の期間は、施術管理者の要件が定められる以前に資格取得した方や養成施設に入学した方もいることから、段階的に決められています。施術管理者の届出をする期間別の実務経験の期間は、下記の通りです。
届出の期間 | 実務経験の期間 |
---|---|
2022年月4から2024年3月まで | 2年間 |
2024年4月以降 | 3年間 |
保険医療機関で柔道整復師として勤務した期間は、実務経験の期間に含めることができます。
●実務経験の証明方法
柔道整復師の実務経験の証明には、実務経験期間証明書が必要です。ただし、以下の事項をすべて満たす必要があります。
(1)柔道整復師実務経験の期間の証明は、別紙様式1の実務経験期間証明書により取扱うものとすること。
(2)実務経験期間証明書は、柔道整復師が実務に従事した登録施術所の管理者(開設者又は施術管理者)による証明とすること。
(3)地方厚生(支)局において登録されている勤務する柔道整復師の情報は、2による柔道整復師実務経験の期間を確認するものとして使用すること。
(引用:厚生労働省「02-01【局長通知】施術管理者の要件について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/171227-02.pdf 引用日2023/07/10)
●その他ポイント
柔道整復師の実務経験は、雇用形態や勤務時間が問われることはありません。常勤はもちろん、非常勤やパートでも実務経験期間証明書の作成が可能です。
また、あはき師の施術管理者に求められる実務経験の詳細は、以下の通りです。
【はり師・きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師】
●実務経験の内容
施術所に勤務して施術者として実務に従事していた場合、実務経験とみなされます。
●実務経験の期間
あはき師の施術管理者に求められる実務経験の期間は1年間です。柔道整復師は段階的に実務経験の期間が決まっているのに対して、あはき師は届出の期間に関わらず1年間と定められています。
ただし、はり師・きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師として、それぞれ1年間の実務経験が必要です。はり師・きゅう師としての実務経験が1年間、あん摩マッサージ指圧師としての実務経験が1年間ないと施術管理者にはなれません。
●実務経験の証明方法
あはき師の実務経験の証明には、柔道整復師と同様に実務経験期間証明書が必要です。施術所が受領委任の取扱いを承諾していない場合は、施術所開設(変更)届の副本の写しを実務経験期間証明書に添付しなければなりません。
●その他ポイント
あはき師の実務経験に、雇用形態や勤務時間は影響しません。ただし、実務経験としてみなされるのは、保健所に施術者として届出されている期間に限られます。
実務経験の定義や実務経験に雇用形態・勤務時間を問わないことは、柔道整復業とあはき業で共通しています。一方、実務経験の期間はそれぞれ異なり、施術管理者になれるタイミングが異なることが特徴です。
施術管理者研修の受講
施術管理者研修では、施術管理者として適切な保険請求を行うための知識を身に付けます。
以下では、柔道整復師の施術管理者研修について詳しく解説します。
【柔道整復師】
●研修対象者
柔道整復師の施術管理者研修は、柔道整復師免許証の交付を受けた方が対象です。ただし、研修には定員が設けられており、受講者の決定には「受領委任の取扱いの登録が済んでいる」「すでに開業準備を進めている」などの優先度の高さが考慮されます。
●受講費用
柔道整復師の施術管理者研修の受講費用は20,000円です。受講が確定した場合、案内に従って期日までに振込入金する必要があります。
●研修方法
16時間(2日間以上)かけて講義による研修を行います。研修方法は、オンライン研修が中心です。オンライン受講が難しい方は、会場スクリーンを用いた講義を視聴することになります。
●研修科目
施術管理者研修の学習分野と科目は、下記の通りです。
学習分野 | 科目 |
---|---|
職業倫理 | ・柔道整復師としての倫理 ・医療関係者 ・社会人としての倫理 ・マナー ・患者との接し方 ・コンプライアンス(法令遵守) |
適切な保険請求 | ・保険請求できる施術の範囲等 ・施術録の作成 ・支給申請書の作成 ・不正請求の事例 |
適切な施術所管理 | ・医療事故 ・過誤の防止 ・事故発生時の対応 ・医療機関等との連携 ・広告の制限 |
安全な臨床 | ・患者の状況の的確な把握 ・鑑別 ・柔道整復術の適用の判断及び的確な施術 ・患者への指導・勤務者への指導 |
(引用:厚生労働省「02-01【局長通知】施術管理者の要件について」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/171227-02.pdf 引用日:2023/01/10)
受講する科目の内容は、すべての登録研修機関で共通です。ただし、学習する科目の順番は登録研修機関によって異なります。
●研修修了の認定・修了証の交付について
登録研修機関により研修修了の認定が行われ、受講後2週間程度で研修修了証が交付されます。
柔道整復師の施術管理者研修は、インターネットでの申込みが基本です。インターネットでの申込みが難しい場合は、「公益財団法人柔道整復研修試験財団」への問い合わせが必要です。
(出典:公益財団法人 柔道整復研修試験財団「柔道整復師施術管理者研修」/https://www.zaijusei.com/training_oparation_2023.html)
そして、あはき師の施術管理者研修における対象者や受講費用、研修方法などは下記の通りとなっています。
【はり師・きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師】
●研修対象者
あはき師の施術管理者研修は、あん摩マッサージ指圧師免許証・はり師免許証またはきゅう師免許証の交付を受けた方が対象です。応募者数が定員数を上回る場合は、抽選で受講者が決定します。
●受講費用
あはき師の施術管理者研修の受講費用は、23,000円です。受講が確定後、手元に届いた案内に従って期日までに振込入金が必要です。
●研修方法
16時間(2日間以上)かけて講義による研修を行います。研修方法は、オンライン研修と会場研修の同時開催となります。
●研修科目
施術管理者研修の学習分野と科目は、下記の通りです。
学習分野 | 科目 |
---|---|
職業倫理 | ・はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師としての倫理 ・医療関係者 ・社会人としての倫理 ・マナー ・患者との接し方 ・コンプライアンス(法令遵守) |
適切な保険請求 | ・健康保険制度と療養費 ・保険請求のできる範囲、同意書、診断書、施術録、支給事務手続き等 ・施術報告書、支給申請書の作成 ・不正請求の事例 |
適切な施術所管理 | ・医療事故 ・過誤の防止 ・事故発生時の対応 ・医療機関等との連携 ・広告の制限 |
安全な臨床 | ・患者の状況の的確な把握 ・鑑別 ・はり、きゅう、あん摩マッサージ指圧の的確な施術 ・はり、きゅう、あん摩マッサージ指圧の施術に関係する最新の情報を入手する方法について ・適応疾患の経過観察に必要な検査と所見の取り方について・勤務者への指導 |
(引用:厚生労働省「20200304-1【通知】あはき施術管理者の要件」/https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/20200304_01.pdf 引用日:2023/07/10)
柔道整復師の施術管理者研修と同様に、受講する科目の内容はすべての登録研修機関で共通しています。
●研修修了の認定・修了証の交付について
登録研修機関により研修修了の認定が行われ、受講後2週間程度で研修修了証が交付されます。
あはき師の施術管理者研修の申込みは、インターネットまたはFAX・郵送が可能です。FAX・郵送での申込みを希望する場合は、事前に「公益財団法人東洋療法研修試験財団」へ問い合わせが必要です。
(出典:公益財団法人 東洋療法研修試験財団「施術管理者研修のご案内」/https://ahaki.or.jp/operation/)
まとめ
柔道整復師やはり師・きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術管理者には、「実務経験」「施術管理者研修」の2つの要件が追加されました。柔道整復師・あはき師が開業するには、「実務経験」「施術者管理研修」の要件を満たして施術管理者になる必要があります。
業種によって実務経験の期間や施術管理者研修の内容に違いがあるため、事前に確認が必要です。施術管理者になろうと考えている方は、厚生労働省や各主催団体の情報を確認して、手続きや研修受講を一つひとつこなしていきましょう。
この記事の監修者