整骨院の「施術部位」とは?おさえておくべきルールも徹底紹介!

2026.08.31
整骨院の「施術部位」とは?おさえておくべきルールも徹底紹介!

整骨院では、患者の負傷箇所や症状に応じて施術を行い、療養費を請求します。適切な請求を行うためには、どの部位を施術したのかを正しく把握し、記録・管理することが欠かせません。

施術部位には、近接部位や部位転がしなど、請求時に注意すべきルールがあります。取り扱いを誤ると、不適切な請求と判断されたり、支給対象外となったりする可能性もあるため、制度への理解が必要です。

そこで今回は、整骨院における施術部位の概要や対象部位から、近接部位の取り扱い、部位転がしが疑われるケース、ルール違反を防ぐポイントまで詳しく紹介します。

1. 整骨院における「施術部位」とは?

整骨院における施術部位とは、柔道整復師が施術を行う身体の部位を指します。単に施術した箇所を示すだけではなく、療養費請求や保険審査における算定の基準となる重要な考え方です。

療養費を請求する際は、どの部位にどのような負傷があり、どのような施術を行ったのかを適切に記録・管理しなければなりません。施術部位の考え方を誤ると、保険者から返戻や減額を受けたり、指導の対象となったりする可能性があります。

また、多部位施術や長期施術、頻回施術は審査対象となりやすいため、施術部位を正しく判断し、負傷状況や施術内容との整合性を確保することが重要です。適正な保険請求を継続するためにも、施術部位に関するルールを十分に理解しておく必要があります。

1-1. 対象となる主な施術部位

整骨院で施術対象となる代表的な部位には、頚部、肩関節、肘関節、手関節、背部、腰部、股関節、膝関節、足関節などがあります。

これらの施術部位は、単に身体の場所を表すものではなく、保険請求や審査における算定単位として区分されています。そのため、「どの部位を施術したのか」は、療養費の支給可否や請求内容の妥当性を判断する重要な基準となります。

施術部位を正確に把握し、それぞれの負傷原因や施術内容との整合性を適切に記録することは、返戻や査定を防ぎ、適正な院運営を行ううえでも欠かせません。

2. 整骨院の施術部位に関する重要なルール(1)近接部位

近接部位とは、解剖学的に近い位置にあり、施術効果が重複しやすいと考えられる部位のことです。

保険制度では、実際には1つの負傷として捉えられるにもかかわらず、複数部位として算定されることによる重複請求を防ぐ目的で、近接部位に関するルールが設けられています。

そのため、複数の部位に施術を行っていても、負傷状況や症状、施術内容によっては独立した部位として認められない場合があります。

近接部位の考え方を理解せずに算定すると、返戻や査定の対象となる可能性があるため注意が必要です。ここからは、保険制度ごとの近接部位の考え方や具体例について詳しく紹介します。

2-1. 保険制度ごとの取り扱い

近接部位の考え方は保険制度によって運用が異なりますが、近年は制度間で一定の統一が図られています。

●健康保険
健康保険では、多部位施術や長期・頻回施術に対する算定ルールが設けられています。

令和8年7月の制度改正では、打撲・捻挫に係る後療料や温罨法料などについて、「2部位目は80%、3部位目以降は60%」へ逓減される仕組みが導入されました。

複数部位を施術する場合は、それぞれが独立した負傷であることを施術録などで適切に説明できることが重要です。

●労災保険
労災保険では、2022年10月の制度改正により、近接部位の考え方や施術録の取り扱いが、原則として健康保険に準じる運用へ変更されました。

そのため、近接部位の判断や施術内容の記録方法についても、健康保険と同様の基準を意識して管理することが求められています。

●自賠責保険
自賠責保険には健康保険のような明確な算定基準はありませんが、実務上は労災保険の考え方を参考に運用されるケースが多く見られます。

そのため、近接部位を複数算定する場合は、それぞれの負傷が独立していることを客観的に説明できるよう、施術録や経過記録を丁寧に残しておくことが大切です。

2-2. 近接部位の具体例

例として、次のようなケースでは近接部位として算定が認められにくい傾向があります。

●頚部捻挫と肩部挫傷
●腰部捻挫と股関節捻挫
●肩関節捻挫と上腕部挫傷

一方で、次のようなケースでは、それぞれ独立した負傷として算定できる可能性があります。

●頚部捻挫と背部打撲
●右肩関節捻挫と左膝関節打撲
●左手関節捻挫と右足関節捻挫

ただし、上記はあくまで一例です。

近接部位は、部位同士が近いという理由だけで一律に算定できないわけではありません。左右や上下などの位置関係だけで判断されるわけではなく、受傷原因や傷病名、症状、施術内容などを総合的に確認したうえで判断されることを覚えておきましょう。

3. 整骨院の施術部位に関する重要なルール(1)部位転がし

部位転がしとは、実際の症状や負傷状況とは異なる部位へ請求対象を変更しながら施術を継続するなど、不適切な療養費請求が疑われる行為を指します。

近接部位が「どの部位を独立した負傷として算定できるか」というルールであるのに対し、部位転がしは請求内容そのものの適正性が問題となる点が大きな違いです。

施術部位の変更自体が直ちに問題となるわけではありません。しかし、症状の改善状況や新たな受傷原因が確認できないにもかかわらず、一定期間ごとに請求部位を変更して施術を継続している場合は、保険者から部位転がしを疑われる可能性があります。

返戻や査定だけでなく、個別指導や監査の対象となることもあるため、施術録などに変更理由を適切に記録しておくことが重要です。

3-1. 部位転がしが疑われる主なパターン

部位転がしも、1つの状況だけで判断されるものではなく、施術経過や負傷原因、施術録の内容などを総合的に確認したうえで判断されます。

部位転がしが疑われる代表的なパターンとしては、下記が挙げられます。

●一定期間ごとに施術部位だけが変更される
●長期間にわたり複数部位の請求が続いている
●症状の経過と施術部位が一致していない
●負傷原因と請求部位の整合性が取れていない

上記のパターンは、「実際の症状に基づく請求が行われていない」「施術の必要性や負傷状況との整合性が確認できない」といった理由から、不適切な請求とみなされるおそれがあります。

適正な療養費請求を継続するためには、施術内容だけでなく、その根拠を記録として残すことが重要です。

4. 施術部位のルール違反とみなされないためのポイント

施術部位に関するルール違反を防ぐためには、保険制度の基準を理解するだけでなく、日頃から施術録や請求内容を適切に管理することが重要です。最後に、適正な療養費請求を行うために押さえておきたいポイントを紹介します。

●負傷原因や施術内容を具体的に記録する
施術録には、「いつ・どこで・どのように負傷したのか」といった受傷状況に加え、症状や施術内容、経過を具体的に記録しましょう。特に複数部位を請求する場合は、それぞれの負傷との関連性が分かるよう記載しておくことが重要です。

●施術部位の変更理由を明確に残す
施術部位が変更となる場合は、症状の変化や新たな負傷など、変更に至った経緯を客観的に記録しましょう。「部位が変わった」という事実だけではなく、その必要性を説明できる内容を残しておくことで、部位転がしと誤解されるリスクを軽減できます。

●施術録と療養費支給申請書の内容を一致させる
施術部位や負傷名、施術内容などに記載の食い違いがあると、返戻や査定の原因となる場合があります。請求前には施術録と療養費支給申請書を照合し、内容に矛盾がないか確認する習慣をつけましょう。

なお、令和9年1月以降は、前月までの連続する12か月の間に、通算8か月以上かつ9部位以上の施術を受けている患者について、保険者による注意喚起通知や償還払いへの変更確認の対象となる基準が追加されています。

今後は長期・多部位施術に対する確認がさらに強化されるため、これまで以上に適正な記録と請求を徹底することが重要です。

まとめ

整骨院の施術部位は、施術箇所を示すだけではなく、療養費請求や保険審査にも関わる重要な要素です。近接部位や部位転がしに関するルールを正しく理解し、施術録や請求内容を適切に管理することで、返戻や査定などのリスクを抑えた適切な院運営を目指せるでしょう。

全国統合医療協会では、保険請求に関する最新情報の提供をはじめ、整骨院・接骨院の運営を幅広くサポートしています。制度改正への対応や日々の院運営に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

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中村 崇男

昭和44年東京生まれ。昭和63年都内整骨院を勤務し、東京柔道整復専門学校を卒業後、平成23年一般社団法人全国統合医療協会を設立。鍼灸師・柔道整復師の社会的地位と健康医療福祉の更なる向上を目標に幅広い分野で活動中。
一般社団法人全国統合医療協会理事長
公益財団法人明徳会清水ヶ丘病院理事長