自家施術・自己施術とは?注意すべきルール・違反時の措置も紹介!

整骨院では、療養費の支給対象となる施術や請求方法について、さまざまなルールが定められています。これらのルールを正しく理解し、適切に運用することは、保険制度を遵守した院運営を行ううえで欠かせません。
その中でも、自身や家族などへ施術を行う「自己施術」「自家施術」は、療養費の取り扱いに関する特別なルールが設けられています。制度を十分に理解しないまま保険請求を行うと、返還請求や償還払いへの変更などの措置につながる可能性があるため注意が必要です。
そこで今回は、自家施術・自己施術の概要や自費施術との違い、知っておくべきルール、ルール違反となった場合の措置について詳しく紹介します。
1. 整骨院における「自家施術」「自己施術」とは?
整骨院における「自家施術」「自己施術」とは、柔道整復師が一般の患者(お客様)ではなく、自身や身内に対して行う施術を指します。いずれも施術の対象者が通常の患者とは異なるため、療養費の取り扱いについて特別なルールが設けられています。
自家施術とは、柔道整復師が家族や関連施術所の開設者・従業員などに対して行う施術のことです。一方、自己施術とは、柔道整復師が自分自身に対して行う施術を指します。
これらの施術自体が禁止されているわけではありません。しかし、療養費の支給対象となるかどうかは一般の患者への施術とは異なるため、制度を正しく理解したうえで対応することが重要です。
1-1. 自家施術・自己施術と自費施術の違い
自家施術・自己施術と混同されやすい用語に、「自費施術」があります。
自費施術とは、健康保険などを利用せず、施術費を全額自己負担で受ける施術のことです。保険適用外の施術や、患者が自由診療として受ける施術がこれに該当します。
一方、自家施術・自己施術は、「誰に施術を行うか」という施術者と患者の関係性を表す用語です。それに対し、自費施術は「施術費をどのように取り扱うか」という費用負担の方法を表しています。
そのため、自家施術・自己施術であっても、自費施術として実施することは可能です。しかし、保険を利用(保険施術)した療養費の支給については別途ルールが定められているため、自費施術とは切り分けて考える必要があります。
2. 自家施術や自己施術を行うときにおさえておくべきルール
自家施術・自己施術は、施術そのものが禁止されているわけではありません。しかし、療養費の取り扱いについては、一般の患者に対する施術とは異なるルールが設けられています。
なぜなら、健康保険法などに基づく療養費制度は、本来柔道整復師が被保険者である患者(第三者)に対して施術を行うことを前提としているためです。
近年は制度の見直しが進み、自家施術・自己施術に関するルールも大きく変更されました。適切な院運営を行うためにも、制度の内容を正しく理解しておくことが重要です。
出典:厚生労働省「「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(通知)」の一部改正について」
出典:厚生労働省「「柔道整復師の施術に係る療養費について」の一部改正について」
2-1. いずれも療養費の支給は完全に対象外となる
従来から、自家施術・自己施術は第三者による確認が難しく、施術の必要性を客観的に判断しにくいことが課題とされてきました。また、施術から療養費請求までが身内同士で完結しやすいため、架空請求や過剰請求などの不適切請求につながるリスクも指摘されています。
こうした背景を踏まえ、2026年(令和8年)7月1日以降は、自家施術・自己施術はいずれも健康保険による療養費の支給対象外となりました。
なお、この制度改正は、自家施術・自己施術自体を禁止したものではありません。あくまで健康保険による療養費を請求できないというルールが設けられたものであり、施術そのものが違法となったわけではありません。
自身や家族、施術所の従業員などに施術を行う場合は、自費施術として対応する、またはほかの整骨院で保険施術を受けることが適切な対応となります。
2-2. ルール違反には厳しい措置が講じられる
自家施術・自己施術は、不適切請求を防止する観点から厳格に運用されています。特に自己施術については、制度上、より厳しい取り扱いが定められています。
自家施術・自己施術について健康保険の療養費を請求した場合は、保険者による確認や患者照会の対象となる可能性があります。
また、自己施術について不適切な請求が確認された場合には、通常の患者照会や注意喚起などの手続きを経ることなく、患者ごとの受領委任払いを取り扱わず、償還払いへ変更する通知が行われる例外規定も設けられています。
このように、自家施術・自己施術は一般の療養費請求よりも厳しく管理されています。制度を誤って理解したまま請求を行うと、保険者からの指導や療養費の返還などにつながるおそれがあるため、最新の制度内容を踏まえて適切に運用することが大切です。
3. 整骨院での自家施術・自己施術におけるよくある質問(Q&A)
自家施術・自己施術については、制度改正によって療養費の取り扱いが変更されたこともあり、「どこまでが認められるのか」「ルール違反になるとどうなるのか」など、疑問を感じる方も少なくありません。
最後に、自家施術・自己施術に関して整骨院経営者や柔道整復師からよく寄せられる質問をQ&A形式で分かりやすく解説します。
3-1. Q1.自家施術・自己施術で保険請求をしたらどうなる?
自家施術・自己施術に係る療養費は、2026年7月1日以降、健康保険の支給対象外となっています。そのため、自家施術・自己施術について療養費を請求することは認められません。
不適切な請求が疑われた場合には、保険者から患者照会や注意喚起が行われることがあります。状況によっては、患者ごとの受領委任の取り扱いが見直されるなどの措置が講じられる可能性もあるため、制度を正しく理解したうえで請求を行うことが重要です。
3-2. Q2.そもそも「償還払い」「受領委任払い」って何?
受領委任払いとは、患者が窓口で自己負担分のみを支払い、残りの療養費を施術所が患者に代わって保険者へ請求する仕組みです。患者の窓口負担が少なく、多くの整骨院で採用されています。
一方、償還払いは、患者が施術費をいったん全額支払い、その後、自ら保険者へ療養費を申請する仕組みです。
なお、自己施術に係る不適切な保険請求が確認された場合には、受領委任の取り扱いを行わず、保険者から償還払いへの変更通知が送付される場合があります。
ただし、自己施術そのものが療養費の支給対象外であるため、償還払いへ変更されたとしても療養費の支給を受けられるわけではありません。「支払い方法が変わるだけで保険請求できるようになる」という制度ではない点に注意しましょう。
3-3. Q3.自身や身内に施術を行うときはどうすれば良い?
自身や家族、施術所の従業員などへ施術を行うこと自体は禁止されているわけではありません。ただし、自家施術・自己施術は健康保険による療養費の支給対象外となるため、保険請求はできません。
そのため、自身や身内に施術を行う場合は、自費施術として対応するか、保険施術を希望する場合はほかの整骨院で施術を受けることが適切です。
3-4. Q4.万が一患者照会や償還払い注意喚起通知が届いたらどうすれば良い?
患者照会や償還払い注意喚起通知が届いた場合は、放置せず、内容を確認したうえで速やかに対応しましょう。
保険者から照会を受けた際は、施術内容や負傷原因などについて誠実に回答することが重要です。また、必要に応じて施術録などの提出を求められる場合もあるため、日頃から負傷原因や施術経過、施術内容を適切に記録・保管しておくことが、円滑な対応につながります。
3-5. Q5.自己施術で償還払いへ変更されたら施術所全体に影響する?
自己施術に係る不適切な請求による償還払いへの変更は、「患者ごとの償還払いへの変更」に関する制度です。
そのため、原則として、対象となった患者以外まで直ちに受領委任制度の対象外となるわけではなく、施術所全体の取り扱いが一律に変更されるものではありません。
一方で、不適切請求の内容や程度によっては、監査や行政処分などの対象となる可能性があります。患者ごとの償還払いへの変更と、受領委任制度の取り扱いや行政処分はそれぞれ異なる制度であるため、混同しないよう注意しましょう。
まとめ
自家施術・自己施術は、施術そのものが禁止されているわけではありませんが、2026年7月1日以降は健康保険による療養費の支給対象外となっています。制度を正しく理解し、保険請求のルールや受領委任払い・償還払いの仕組みを踏まえて適切に対応することが、不適切請求の防止や適正な院運営につながります。
全国統合医療協会では、柔道整復師や整骨院経営者に向けて、保険請求制度や法改正に関する情報提供をはじめ、開業・運営支援、療養費請求代行など、整骨院運営を幅広くサポートしています。制度改正への対応や日々の保険請求に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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