整骨院の「往療料」とは?算定基準・方法と算定時のポイントを紹介!

整骨院や鍼灸マッサージ院では、患者の自宅や施設へ訪問して施術を行う往療(訪問施術)を実施することもあります。こうした訪問施術にかかる費用を適切に算定するための制度として、「往療料」が設けられています。
往療料は、単なる施術料とは別に請求できる料金であり、適正な請求には算定基準や対象ケースを理解しておくことが重要です。また、距離加算や特別地域加算など、最新の制度改正にも注意が必要です。
そこで今回は、整骨院における往療料の基本的な考え方から算定基準、2025年現在における算定料金、さらに算定時のポイントまで、実務に役立つ情報を詳しく紹介します。
目次
1. 整骨院における「往療料」とは?
「往療料(おうりょうりょう)」とは、自身で通院するのが困難な患者さんの自宅や施設に施術者が訪問して施術を行う、つまり「往療(おうりょう)」を実施する際に支給される料金のことです。いわゆる出張料のような位置づけであり、往療を行った距離に応じて算定できます。
往療の対象となるのは、歩行困難などで自宅や施設からの通院が難しい患者さんや、疾病や負傷のために自宅で静養している(外出が制限されている)患者さんに限られます。往療していない・患者さんが歩行可能であるにもかかわらず往療料を算定するのは、不正請求にあたる点に注意が必要です。
2. 往療料の算定基準|往療が認められるケース
前述の通り、往療料は患者さんが自ら通院することが困難な場合に限り算定できる料金です。そのため「杖やタクシーを使えば通院可能だが体調が悪い」「交通手段がないため来院できない」といった理由だけでは往療料の算定は認められません。
また、算定基準は施術者が「柔道整復師」か「あん摩マッサージ指圧師」「はり・きゅう師」かによってやや異なります。ここからは、それぞれの算定基準について分かりやすく解説します。
2-1. 「柔道整復師」の場合
「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」の「第三 往療料」では、柔道整復師が算定できる往療料について下記のように定めています。
● 往療は、往療の必要がある場合のみ行う
● 往療料は、下肢の骨折または不全骨折、股間節脱臼、腰部捻挫等による歩行困難など、安静を必要とするやむを得ない理由により、患者の家族の希望に応じて往療を行った場合に算定できるものである
● 「患者の希望のみの場合」または「定期的もしくは計画的に往療を行った場合」には算定できない
出典:厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」
2-2. 「あん摩マッサージ指圧師」「はり・きゅう師」の場合
「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意事項等について」の「第7章 往療料」では、あん摩マッサージ指圧師とはり・きゅう師が算定できる往療料について下記のように定めています。
● 往療料は、患者が歩行困難をはじめとした安静を必要とするやむを得ない理由などが突発的に生じたことによって通所での治療を受けることが難しくなった場合に、患者の家族の希望に応じて往療を行ったときに支給できるものである
● 「治療上真に必要があると認められない場合」または「患者の家族の希望のみの場合」には算定できない
出典:厚生労働省「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意」
つまり、柔道整復師は「緊急性のある場合ややむを得ない事情での往療」において往療料を算定でき、定期的な訪問は原則算定できません。一方、あん摩マッサージ指圧師・はり・きゅう師は「治療上必要と認められる場合」に限れば、定期訪問でも算定可能です。
3. 【2025年最新】往療料の算定料金
整骨院が算定できる往療料は1~2年おきに改定されており、2025年9月現在は「あはき療養費の令和6年度料金改定」に基づいた金額が基準として適用されています。
ここからは、2025年現在における往療料の算定料金について分かりやすく紹介します。
出典:厚生労働省「あはき療養費の令和6年度料金改定(案)について」
3-1. 往療料は1回につき「2,300円」
整骨院で算定できる往療料は、2024年10月の改定以降、1回につき2,300円となっています。従来は、片道4km未満の場合2,300円、4km超の場合2,550円と距離に応じた加算がありましたが、今回の改定で距離加算は廃止されました。
| 改定時期 | 往療料 | 距離加算 |
|---|---|---|
| 2018(平成30)年10月~ | 1,860円 | 2kmごとに800円 |
| 2019(令和元)年10月~ | ||
| 2020(令和2)年10月~ | 2,300円(4km超2,700円) | 往療料に距離加算を包括化(2kmごとの加算廃止) |
| 2022(令和4)年10月~ | 2,300円(4km超2,550円) | |
| 2024(令和6)年10月~ | 2,300円 | 距離加算廃止 |
過去の推移を見ると、2018年10月は1,860円に2kmごとの加算800円があり、2019年・2020年には距離加算の包括化が行われ、2022年には4km超2,550円と微調整されてきました。
このように往療料は段階的に増額される一方で、距離加算が廃止されたことで、遠方への往療による収入は減少傾向となっています。つまり、遠方訪問が多い整骨院にとっては、算定可能額の変動に注意が必要です。
3-2. 距離加算の廃止に伴う特別地域加算の創設
令和6年度の料金改定では、往療料の距離加算が廃止された代わりに「特別地域加算」が新設されました。特別地域加算は離島や中山間地など、訪問が困難な地域に居住する患者に対して往療した場合、1回につき250円を算定できる制度です。
特別地域加算の対象となるのは、施術所の所在地(出張のみの施術者は届出住所)が該当地域にある場合、または施術所が地域外でも該当地域に居住する患者に訪問した場合です。
ただし、片道16kmを超える訪問は原則として対象外で、遠方訪問には特別な理由が必要です。なお、この特別地域加算は距離加算廃止による影響を補うための制度であり、今後の料金改定で内容が変更される可能性もあるため、最新情報の確認が重要です。
4. 往療料の算定時におさえておきたいポイント
往療料を算定する際には、算定基準や記録のルールを正しくおさえておくことが重要です。
特に、距離の算定方法や療養費申請書への記載内容などは、保険者による審査で必ず確認される項目であり、誤りがあると支給が認められない可能性があります。
最後に、整骨院やあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの施術者が往療料を算定する際に注意すべきポイントを整理します。
4-1. 往療距離の算定ルール
往療料の算定における距離は、原則として「施術所の所在地または届出住所と訪問場所の直線距離」で計算します。
実際の移動距離が直線距離と大きく異なる場合は、各保険者の判断で実距離での算定が認められることがあります。なお、片道16kmを超える往療は原則算定できませんが、必要性が認められた場合は例外的に認められます。
また、複数の患者宅を連続訪問する場合は、2軒目以降は先の患者宅を起点に距離を算定しますが、施術所からの方が近い場合は施術所からの距離を用います。
同一家屋内で複数の患者に施術する場合は1回の訪問につき1人分の往療料のみ算定し、月内での調整が難しい場合は翌月以降に振り分けることで均等化します。
4-2. 療養費申請書に記載すべき内容
往療料を申請する際には、療養費申請書に往療が必要である理由を明記する必要があります。このとき、単純に「通院の手段がない」「高齢である」といった理由だけでは算定できません。
柔道整復師の場合は、具体的な負傷部位や症状を記載することが求められます。一方、あん摩マッサージ指圧師やはり・きゅう師の場合は、保険医による往療の必要性の有無や理由を示した同意書を添付することで、算定根拠として認められます。
このように、往療料の適正な算定には正確な記載と証拠書類の準備が欠かせないことを覚えておきましょう。
まとめ
整骨院やあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの施術者が算定する「往療料」は、歩行困難などで通院が難しい患者に対して自宅や施設で施術を行った場合に支給される費用です。
2025年現在の往療料算定額は「1回につき2,300円」です。距離加算は廃止されましたが、特定地域への訪問には特別地域加算が適用される場合があります。なお、算定時には往療距離や療養費申請書への記載内容など、細かなルールを押さえることが重要です。
全国統合医療協会では、整骨院の開業支援や算定ルールに関する実務アドバイスなど、現場で役立つサポートを提供しています。往療料の算定や訪問施術の運用について不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者

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