整骨院のレセプトガイド|負傷名・負傷原因の記載方法と記載例

2026.07.31
整骨院のレセプトガイド|負傷名・負傷原因の記載方法と記載例

整骨院では、健康保険を利用した施術を行う際、施術内容や負傷状況などをレセプト(療養費支給申請書)に記載し、適切に請求を行う必要があります。レセプトは保険請求の根拠となる重要な書類であり、正確な記載が求められます。

特に、レセプトに記載する「負傷名」や「負傷原因」は、 支給対象となる施術かどうかを判断するうえで重要な項目です。記載内容に不備や誤りがあると、返戻や照会の対象となる可能性があります。

そこで今回は、整骨院のレセプトにおける負傷名・負傷原因の基本知識から、記載時のポイント、具体的な記載例まで詳しく解説します。

1. 整骨院のレセプトにおける「負傷名」とは?

整骨院のレセプトに記載する負傷名は、 患者さんのケガの状態を柔道整復療養費の算定ルールに基づいて表した名称のこと です。整骨院では、健康保険を利用した施術を行う際、療養費支給申請書(レセプト)に負傷名を記載して請求を行います。

負傷名は保険請求の根拠となる重要な項目であり、施術の対象となるケガの内容を明確に示す役割があります。そのため、患者さんの症状を自由に記載できるわけではなく、 柔道整復療養費の取扱いにおいて認められた名称を使用しなければなりません。

また、レセプトでは使用できる負傷名だけでなく、記載順序にも一定のルールが設けられています。適切な負傷名を選択し、決められたルールに沿って記載することは、返戻や照会を防ぐうえでも重要です。

ここからは、整骨院のレセプトにおける負傷名の基本ルールについて詳しく紹介します。

1-1. 使用できる名称

柔道整復療養費のレセプトでは、使用できる負傷名があらかじめ定められています。そのため、患者さんの状態を表現する際も、認められた負傷名の中から適切なものを選択しなければなりません。

整骨院のレセプトで使用できる主な負傷名は、下記の通りです。

●「骨折」
●「不全骨折」
●「脱臼」
●「捻挫」
●「打撲」
●「挫傷」

例えば、転倒によって足関節をひねった場合は「足関節捻挫」、打撃によって患部に損傷が生じた場合は「打撲」や「挫傷」といった形で記載します。

同じケガであっても、負傷部位や状態によって適切な負傷名は異なります。そのため、実際の負傷状況や施術内容を踏まえたうえで、 柔道整復療養費のルールに沿った名称を選択することが大切です。

1-2. 使用できない名称

柔道整復療養費のレセプトでは、保険適用の対象外となる症状名や、ルール上認められていない名称を記載することはできません。

整骨院のレセプトで使用できない主な名称は、下記の通りです。

●保険適用の対象外となる症状名
基本的に、自由診療(自費施術)に関する症状名は、柔道整復療養費の対象外です。
例えば、「慢性腰痛」や「肩こり」といった慢性的な症状のほか、「猫背」「骨盤のゆがみ」などの状態は、レセプト上の負傷名として使用できません。
これらの症状は急性または亜急性の外傷性負傷とは異なるため、健康保険による柔道整復療養費の対象外として扱われます。

●柔道整復療養費のルール上認められていない名称
医療機関で使用される診断名の中には、整骨院のレセプトへそのまま記載できないものがあります。
柔道整復師がレセプトに記載できるのは、柔道整復療養費の取扱いで定められた負傷名のみです。そのため、医科では一般的に使用される診断名であっても、柔道整復療養費のルールに合わせて読み替える必要があります。
例えば、病院で診断される「頚部筋挫傷」や「僧帽筋損傷」といった名称の場合、整骨院では「頚部挫傷」として取り扱われます。

1-3. 記載順序

レセプトに複数の負傷名を記載する場合は、 原則として負傷年月日の順に記載しなければなりません。

ただし、骨折・不全骨折・脱臼については例外が設けられています。これらの負傷は療養費の算定ルールにおける逓減率の適用に関係するため、初検時に限り負傷年月日にかかわらず優先して記載することが認められています。

また、初検時に登録した負傷名の順序は、その後のレセプトでも原則として変更できません。そのため、最初のレセプトを作成する段階で、負傷年月日や負傷区分を確認しながら適切な順序で記載することが重要です。

2. 整骨院のレセプトにおける「負傷原因」とは?

負傷原因とは、 患者さんがどのような状況でケガをしたのかを示す情報のことです。

柔道整復療養費の請求では、その負傷が保険適用の対象となる急性または亜急性の外傷であることを確認するための重要な判断材料として扱われます。負傷に至った経緯を具体的に記載することで、負傷名との整合性や施術の妥当性を確認しやすくなります。

一方で、負傷原因の記載内容が不十分であったり、負傷名との整合性が取れていなかったりすると、保険者から照会を受けたり、レセプトが返戻されたりする可能性があります。そのため、負傷原因は単なる補足情報ではなく、適切な保険請求を行ううえで重要な記載項目の1つと言えます。

ここからは、負傷原因の記載が必要となるケースや、記載時に意識したいポイントについて解説します。

2-1. 負傷原因の記載が必要なケース

負傷原因は、すべてのレセプトで必ず記載しなければならないわけではありません。柔道整復療養費の算定ルールにおいて、一定の条件に該当する場合に記載が求められます。

負傷原因の記載が必要な代表的ケースとして挙げられるのが、 3部位以上の負傷に対して療養費を請求し、3部位目に多部位逓減が適用される場合 です。この場合は、請求対象となるすべての負傷名について、具体的な負傷原因を記載しなければなりません。

一方で、3部位以上の請求であっても、初回処置のみで後療や冷罨法、温罨法、電療などの算定がなく、多部位逓減の対象とならないケースでは、負傷原因の記載が不要となる場合もあります。

ただし、制度上は記載義務がない場合であっても、施術録との整合性を確保し、返戻や照会を防止するためには、 日頃から負傷原因を詳細に記録しておくことが望ましいでしょう。患者さんへの聞き取り内容を適切に残しておくことで、後から確認が必要になった際にもスムーズに対応できます。

2-2. 負傷原因を記載するときのポイント

負傷原因は、保険者や第三者が読んでも負傷状況を正しく把握できる内容であることが重要です。適切な記載を行うことで、レセプトの返戻や照会のリスクを減らし、請求業務を円滑に進めやすくなります。

負傷原因を記載するときの主なポイントは、下記の通りです。

●負傷状況を正しく把握できる内容にする
「いつ・どこで・何をしていたときに・どの部位を・どのように負傷したのか」が分かるよう、負傷に至った経緯を具体的に記載しましょう。

●負傷原因が曖昧な表現は避ける
「歩行中に負傷した」といった簡潔・曖昧な表現は避け、「転倒しそうになって踏ん張った際に負傷した」など、負傷に至った具体的な経緯を詳しく記載しましょう。

●慢性症状を疑われる表現は避ける
「長時間歩いていたら痛くなった」「運動中に痛くなった」など、急性・亜急性の外傷ではなく疲労や慢性症状と受け取られる可能性がある表現は避けましょう。

●通勤災害や労災と誤認される表現に注意する
「仕事中」「通勤中」「勤務先で」などの記載は労災保険や通勤災害の対象と判断される可能性もあるため、私用による負傷である場合はその旨が分かるよう記載しましょう。

●擬音語や患者目線の表現はなるべく使用しない
「ポキッ」「ピキッ」などの擬音語や患者さんによる主観的な発言をそのまま記載するのは避け、誰が読んでも同じように負傷状況を理解できる、客観的かつ具体的な表現を心がけましょう。

3. 整骨院のレセプトにおける負傷名・負傷原因の記載例

最後に、整骨院におけるレセプト作成時の記載例を紹介します。

【例1】負傷名:右肩関節捻挫

悪い例 「自宅で肩を捻って負傷」
良い例 「自宅で高所の荷物を取ろうとしてバランスを崩し、右腕を伸ばした際に右肩を捻り負傷」

悪い例では、どのような状況で負傷したのかが分かりません。一方、良い例では負傷に至った経緯や動作が具体的に記載されており、右肩関節捻挫に至った状況を客観的に把握できます。負傷原因は、 負傷のきっかけや動作まで分かるように記載することがポイントです。

【例2】負傷名:左足関節捻挫

悪い例 「朝に駅の階段で踏み外し負傷」
良い例 「私用で外出中、駅構内の階段を下りていた際に段差を踏み外し、左足関節を捻り負傷」

悪い例でも負傷状況はある程度把握できますが、私用による負傷なのか、通勤中や業務中の負傷なのかが分かりません。良い例のように「私用で外出中」と記載することで、労災や通勤災害との誤認を防ぎやすくなります。

このように、負傷原因はできるだけ具体的かつ客観的に記載し、負傷名との整合性が取れた内容にすることが重要です。

まとめ

整骨院のレセプトでは、負傷名や負傷原因を柔道整復療養費のルールに沿って適切に記載することが重要です。

レセプトに使用できる負傷名には制限があり、負傷原因についても負傷状況を具体的かつ客観的に記載しなければなりません。適切なレセプト作成は、返戻や照会の防止にもつながります。

全国統合医療協会では、整骨院の運営や保険請求に関するさまざまなサポートを行っています。レセプト業務や制度対応に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

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中村 崇男

昭和44年東京生まれ。昭和63年都内整骨院を勤務し、東京柔道整復専門学校を卒業後、平成23年一般社団法人全国統合医療協会を設立。鍼灸師・柔道整復師の社会的地位と健康医療福祉の更なる向上を目標に幅広い分野で活動中。
一般社団法人全国統合医療協会理事長
公益財団法人明徳会清水ヶ丘病院理事長