接骨院(整骨院)開業の将来性|今後の経営に必要な要素も紹介!

2024.11.29
接骨院(整骨院)開業の将来性|今後の経営に必要な要素も紹介!

柔道整復師の資格を活かして接骨院(整骨院)を開業する人が増えています。働き方の自由度が高まり、理想の治療院を経営できるのが大きな魅力です。しかし、接骨院の廃業率は高く、安定した経営を続けられるのか不安を抱く人も少なくありません。

これから接骨院を開業しようと考えている人は、業界の将来性や現状をチェックしておきましょう。

今回は、接骨院開業の将来性と現状について詳しく解説します。開業に向けておさえておくべきポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてください。

1. 接骨院(整骨院)開業に将来性があると言われる3つの理由

接骨院(整骨院)は、子どもから高齢者まで幅広い年代に需要がある仕事です。今後も将来性が期待されていることから、資格取得後に実務経験を積んで、独立開業を検討する柔道整復師も多く見られます。

そこでまずは、接骨院開業に将来性があると言われる理由を3つ解説します。

1-1. 開業・運営に必要な柔道整復師の信頼性の高さ

接骨院の開業には、柔道整復師の資格取得が必須です。養成施設で学んだ上で国家資格に合格しなければなりません。柔道整復師の合格率は50~60%と決して高いとは言えないことから、信頼性の高い資格と言えます。

接骨院を開業できるのは資格を持つ人に限られるため、需要がある限り必要とされる業界です。

はり師・きゅう師やアスレティックトレーナーなどの分野を学ぶことで、ダブルライセンスも可能です。資格の掛け合わせによって、より利用者の需要にマッチした治療院を展開することもできるでしょう。

1-2. 高齢化の進展・健康意識の高まりによる需要の伸び

日本では、年々高齢者の割合が高くなっています。体の不調を感じる人や介護が必要な人が

増えていることから、接骨院への需要が伸びています。

また、長時間のデスクワークや立ち仕事が原因で、腰痛や肩こりに悩む人も少なくありません。働き盛りの世代においても、体のメンテナンスを目的とした接骨院の利用者が増えているのが現状です。

高齢化の増加や人々の健康意識の高まりは、接骨院の将来性に大きく影響しています。幅広い年代で接骨院の利用者が増えていることから、今後も需要が高まると考えられています。

1-3. 独立による柔軟な働き方と安定した収入の可能性

独立開業した接骨院には、定年退職の概念がありません。いつまで働くかを自分で決められるため、長期にわたって安定した収入を得られる可能性があります。

「年齢に縛られずに自由に働きたい」「柔道整復師の資格を活かして長く働きたい」と考える人は、独立開業を選択する傾向にあります。

経営がうまく行けば、雇用されて働くよりも高収入を得ることも可能です。将来的には、普段のメイン業務をスタッフに任せて自分は裏方に徹し、体を使わずに安定した収入を得ることもできるでしょう。

2. 柔道整復師と整骨院の現状

接骨院業界について正しく知ることで、開業の一歩を踏み出しやすくなります。経営を成功させるためにも、業界の状況をチェックしておきましょう。

ここでは、柔道整復師と接骨院の数の推移を詳しく解説します。

2-1. 柔道整復師は増加傾向にある

2012年~2022年の柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の推移は、下記の通りです。

2012年 2014年 2016年 2018年 2020年 2022年
柔道整復師 58,573 63,873 68,120 73,017 75,786 78,827
あん摩マッサージ指圧師 109,309 113,215 116,280 118,916 118,103 121,568

(出典:厚生労働省「就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/dl/kekka3.pdf

柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の資格を取得する人は、年々増加傾向にあります。特に、柔道整復師の数は10年間で約1.3倍に増えています。

一方で、接骨院で働く人の数が不足していることも特徴です。スポーツチームや介護施設、クリニックなど接骨院以外のフィールドで活躍する人や、独立開業する人が増えていることが大きく影響しています。

2-2. 接骨院も飽和状態にある

2012年~2022年における柔道整復師の施術所の推移は、下記の通りです。

2012年 2014年 2016年 2018年 2020年 2022年
42,431 45,572 48,024 50,077 50,364 50,919

(出典:厚生労働省「就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所」/https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/dl/kekka3.pdf

柔道整復師の施術所は、右肩上がりの状態が続いています。独立開業を検討する人が多いことからも分かるように、接骨院は飽和状態にあると言えます。

ただし、接骨院の廃業率は高く、開業から数年で廃業に至るケースもめずらしくありません。安定した利益を出しながら長く経営を続けるには、競争率が激しい中で生き残るための工夫が必要です。

3. 今後の接骨院経営に必要な要素・ポイント5選

接骨院の開業を成功させるには、経営に必要な要素やポイントをしっかりおさえておくことが大切です。数年後・数十年後を想定した上で、開業の準備を進めましょう。

ここからは、今後の接骨院経営に必要な要素とポイントを5つ紹介します。

3-1. 集客しやすい商圏・立地の選定

接骨院を開業するにあたり、立地の選定は慎重に行いましょう。開業する地域を誤ると、思うように集客できずに経営が苦しくなる可能性があります。

開業を考えている地域がある場合は、必ず商圏調査を行うことがポイントです。生活している人々の年齢層をチェックして、ターゲット層にマッチしているかチェックしましょう。競合となる接骨院や整骨院がないかどうかも把握しておきます。

狙い目なのは、「ターゲット層にマッチしており競合が少ない地域」です。さらにアクセス面に優れていれば、近隣の地域からの集客も見込めるでしょう。

3-2. ICTを活用した受付・窓口・事務作業の効率化

接骨院業界においても、ICT活用が発展すると考えられています。ICTとは、インターネットを活用した技術やサービスを意味する言葉です。

ICTの活用により、受付や窓口業務、事務作業などの負担を大幅に軽減できます。本業である施術に使える時間が増えるため、対応できる利用者数を増やすことができます。

また、利便性が向上することで、顧客満足度の向上や集客率アップも期待できるでしょう。

3-3. AIを活用した高度な分析・施術の実用化

AIの活用により、利用者の健康状態をより正確に把握できるようになります。画像を分析して姿勢のズレや筋肉のこわばりなどを把握することで、より質の高い施術を提供できます。施術後の変化を可視化できるため、説明時の説得力が増すのもメリットの1つです。

海外では、AIによる施術の実用化も進められています。AIの普及によりさまざまな職業がなくなる可能性があると言われているものの、接骨院業界は人の手による施術がメインであるため、AIに仕事を奪われる可能性は限りなく低いでしょう。

3-4. 競合他院との差別化につながる専門性の提供

接骨院業界は飽和状態にあるため、経営を安定させるには競合他院との差別化に取り組む必要があります。他院と同じようなアピールをしていると、数多くある接骨院の中に埋もれてしまいます。

競合他院との差別化を図るには、専門性を高めるのも1つの方法です。

差別化につながる専門性のアピール例は、下記の通りです。

産後の骨盤矯正
スポーツ障害への施術
腰痛専門
猫背矯正に特化

「キッズスペースあり」「22時までOK」など、専門性とターゲット層のライフスタイルを掛け合わせて差別化を図るのも良いでしょう。

3-5. 来院に依存しないビジネスモデルの構築

接骨院の利用者の多くは、痛みや違和感などの悩みがあるうちは来院するものの、症状が落ち着くにつれて来院頻度が減ります。集客しやすい商圏・立地で開業しても、コンスタントに利用者が集まるとは限りません。

来院に依存したビジネスは売上の減少に陥るリスクがあるため、他のビジネスモデルも構築しておくことが大切です。例えば、健康食品やサポーターなどの物販、予防を目的とした施術メニューなどが挙げられます。

物販で売上アップを目指すには、「他では買えない」「他よりもお得に買える」などのメリットが必要です。

まとめ

高齢化の進展や健康意識の高まりにより、接骨院業界への需要は年々高まっています。独立開業により自由な働き方や安定した収入が期待できるため、将来性も高いと言えるでしょう。

接骨院開業で成功するには、ICTやATの活用、競合との差別化などの工夫も必要です。接骨院業界では、療養費改定や明細書交付義務化対象の拡大などにより経営が難しくなっているため、プロのサポートを受けながら開業を目指しましょう。

全国統合医療協会では、接骨院の開業支援を行っています。新たに鍼灸施術を始めるなどのサポートも行っているため、開業や経営に不安がある人はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

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中村 崇男

昭和44年東京生まれ。昭和63年都内整骨院を勤務し、東京柔道整復専門学校を卒業後、平成23年一般社団法人全国統合医療協会を設立。鍼灸師・柔道整復師の社会的地位と健康医療福祉の更なる向上を目標に幅広い分野で活動中。
一般社団法人全国統合医療協会理事長
公益財団法人明徳会清水ヶ丘病院理事長