整骨院・接骨院の広告制限とは?注意すべき表現・表記を徹底解説!

2023-07-11

整骨院・接骨院を経営する方の中には、集客のために広告を出そうと考えている方も多いでしょう。広告は多くの方に自院を知ってもらう機会をつくることができますが、整骨院・接骨院には「広告制限」があることに注意が必要です。

この記事では、整骨院・接骨院における広告制限の対象や、法律による制限が設けられている背景・理由について解説します。整骨院・接骨院が注意すべき広告規制のポイントや違反した場合のペナルティについても併せて確認し、適正な広告を作成するための準備を整えましょう。

整骨院・接骨院の「広告制限」とは?

整骨院・接骨院の広告は、法律(「柔道整復師法」第24条)によって定められています。法律で定められている事項以外の内容を広告に記載することはできないことを、必ず押さえておきましょう。

(広告の制限)
第二十四条 柔道整復の業務又は施術所に関しては、何人も、文書その他いかなる方法によるを問わず、次に掲げる事項を除くほか、広告をしてはならない。
一 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
二 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
三 施術日又は施術時間
四 その他厚生労働大臣が指定する事項

(引用:e-Gov法令検索「柔道整復師法」/https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC1000000019_20220617_504AC0000000068

なお、柔道整復師法第24条の「四 その他厚生労働大臣が指定する事項」の例として、大阪市が公表している下記のような内容が挙げられます。大阪市に限らず、全国の整骨院・接骨院に適用される内容であることに注意しましょう。

●ほねつぎ(又は接骨)
●柔道整復師法第19条第1項前段の規定による届出をした旨
●医療保険療養費支給申請ができる旨(脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る)
●予約に基づく施術の実施
●休日又は夜間における施術の実施
●出張による施術の実施
●駐車設備に関する事項

(引用:大阪市「施術所の広告及び名称に関する規制」/https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000056997.html

また、整骨院・接骨院における広告は厳密に定義されており、下記のような性質をもつものはすべて広告に該当します。下記のような広告を出す場合は、法律に則って適切な内容を記載するようにしましょう。

【整骨院・接骨院における「広告」の定義】

●【誘引性】…患者さん(利用者さん)を誘引する目的で作成されるもの
●【特定性】…整骨院・接骨院の名称および、柔道整復業やあんま業などの施術を提供する人物の氏名が特定できるもの
●【認知性】…一般の方が認識できる状態にあるもの

整骨院・接骨院における広告制限の対象

整骨院・接骨院における広告制限は、不特定多数の方の目に触れやすい媒体を主な対象としています。下記のような媒体が制限の対象となることを押さえておきましょう。

【広告制限の対象となる媒体の代表例】

●チラシ
ポスティングや新聞折込で配布するチラシや、新聞・雑誌などに掲載する広告などが該当します。

●看板などの外観
整骨院・接骨院の看板も広告制限の対象となります。外から見えるように窓やドアに貼ったポスターなどの掲示物も、制限の対象となることに留意しましょう。

●インターネット上の広告
インターネット上のバナー広告や、検索結果で上位に表示される有料オプションも広告制限を受けます。

自院のホームページやポスターなどの院内掲示物、パンフレットなどの院内配布物は、今のところ広告制限の対象外となっています。しかし、これらの媒体を見た方の誤解を招く表現や、誇大広告と考えられる表現は避けたほうが無難です。適正な表現を心がけましょう。

広告制限の背景・理由

整骨院・接骨院の広告が法律による制限を受けるようになった背景には、不適切な広告による患者さんの悪質な誘引・集客があったことが挙げられます。

患者さんの誤解を招く広告や誇大表現と考えられる広告が数多く報告されたことを受け、悪質な誘引・集客から患者さんを保護するために広告制限が設けられることになりました。

法律による広告制限は、患者さんの身体の被害や経済的損失を防ぐために必要なことです。患者さんのためにも、法律を順守し、適正かつ明確な表現の広告を作成するようにしましょう。

【整骨院・接骨院】注意すべき広告規制5つ

整骨院・接骨院が広告を出す際には、法律で定められた広告制限から逸脱しないよう注意する必要があります。下記のような表現に注意した上で、広告の作成を進める必要があるでしょう。

【注意すべき5つの広告規制】

(1)景品表示法に抵触する表現
(2)薬機法に抵触する表現
(3)患者さんの個人情報
(4)具体的な施術内容
(5)保険施術・自費施術の料金

ここでは、上記の5つの規制内容について詳しく解説します。

(1)景品表示法に抵触する表現

整骨院・接骨院の広告やホームページ、院内掲示物および院内配布物は、すべて景品表示法の適用対象となります。下記のような表現は景品表示法に抵触する可能性が高いため、広告などには使用しないようにしましょう。

【景品表示法に抵触する可能性が高い表現と具体例】

●誇大広告
効果や効能、得意分野などを大げさに表現することにより、患者さんの誤解を招きかねない広告を指します。「○○に効く」「健康になります」「改善率○%」といった表現は誇大広告と見なされるので注意してください。

●整骨院・接骨院としての品位を損ねる表現
「今なら○円で△△療法を受けられる」など、費用を強調する広告は整骨院・接骨院としての品位を損ねるとして医療広告ガイドラインにも違反します。「無料相談で○○を差し上げます」のように、提供する施術とは直接関係のないサービスで誘引する表現も厳禁です。

●比較優良広告(優良誤認広告・有利誤認広告)
「○○エリアの顧客満足度NO.1」などの優良誤認広告や、通常料金と同じ金額を提示して「今なら半額」などとする有利誤認広告も景品表示法違反です。

(2)薬機法に抵触する表現

販売している健康食品やサプリメントを広告に掲載する場合、効果・効能を表示すると薬機法に抵触する可能性があるため注意が必要です。

また、柔道整復術や鍼灸、あんま・マッサージ・指圧は「医療類似行為」として法律で認められているものの、医師が行う医業である「医行為」ではありません。「医師」「医行為」を想起させる言葉・表現は医師法や医療法に抵触する恐れがあるため、整骨院・接骨院の広告には使用しないようにしましょう。

【薬機法に抵触する可能性が高い表現】

●「医師」「ドクター」
●「診療」「診察」「問診」
●「診療時間」「休診日」
●「院内」
●「治る」「完治する」
●医療機関の受診が必要となる症状・疾病の名称

(3)患者さんの個人情報

施術に関する体験談(口コミ)は、患者さんが「自分も治るに違いない」と誤解・誤認する可能性があるため、広告規制の対象となる記載に該当します。施術前後の写真を掲載することも避けたほうがよいでしょう。

なお、施術に関すること以外のコメントや、実際に通院している患者さんの写真を掲載すること自体は禁止されていませんが、患者さん本人の了承が必要となります。これらの情報を掲載する場合は、個人情報保護法などの法律に抵触するリスクが高まることに注意しましょう。

(4)具体的な施術内容

自院で行う施術内容を広告でアピールしたい方も多いでしょう。「柔道整復師法」や「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(あはき法)」では、取り扱っている施術の名称を下記のように記載することは可能です。

【柔道整復師法・あはき法で認められている記載(例)】

●柔道整復師師の場合
「ほねつぎ」「接骨」
●あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師の場合
「もみ療治」「やいと」「えつ」「小児鍼」

ただし、具体的な施術内容を広告に記載することは法律で禁止されていることに注意が必要です。施術の作法や流派、施術を受けることで期待される効果・効能に関する記載も禁止されていることを押さえておきましょう。

(5)保険施術・自費施術の料金

整骨院・接骨院の施術料金が気になる患者さんも多いため、広告に施術料金を記載したいと考えている方も少なくないでしょう。

しかし、保険施術・自費施術ともに、広告に料金を記載することはできません。法律で決められている項目以外の内容は記載できないことに留意しましょう。

広告制限に違反してしまうとどうなる?

整骨院・接骨院が広告制限を逸脱した広告を配布・掲示した場合、患者さんや周辺住人・通行人、同業者などが管轄する保健所や地方厚生局に通報する場合があります。通報を受けた保健所・地方厚生局が指導に入り、訪問によるチェックや注意勧告が行われたり、文書の提出が求められたりすることを押さえておきましょう。

なお、「再三の注意にかかわらず改善の兆しがない」「違法性が高い」など、悪質とみなされる場合には起訴される可能性があります。有罪が確定すると、柔道整復師法やあはき法に基づいて30万円以下の罰金が課せられることに注意してください。

まとめ

整骨院・接骨院には、患者さんが不利益を被らないよう広告制限が設けられており、法律で定められた広告制限を逸脱した場合は30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。特に、チラシや看板、インターネット上の広告などを出す際には、規制されている内容を記載していないかどうか十分に確認するようにしましょう。

広告制限を逸脱しないような広告をしっかり打つためには、専門的な知識をもつ第三者に相談することも1つの方法です。広告を検討している方は、整骨院・接骨院の開業支援や経営支援を広く行っている「全国統合医療協会」にぜひご相談ください。